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【解説】オバマ氏広島訪問 覚悟問われるヒロシマ

 米国の現職大統領として初めて、オバマ氏が被爆地に立つ決断をした。2009年の就任時から訪問を呼び掛けてきた被爆者や官民の関係者にとっては、被爆71年を迎えてようやく実現をみることになる。ただ、それは「核兵器なき世界」への通過点にすぎない。

 被爆地がオバマ氏の被爆地訪問を求め続けてきたのは、核超大国の指導者として核兵器の使用が人と街にもたらす結果を肌で感じ、速やかになくす行動につなげてもらうためにほかならない。平和記念公園(広島市中区)で原爆慰霊碑を前にしての一挙手一投足、語り口、その内容から、ヒロシマは冷静にオバマ氏の覚悟を見極めることになる。

 そのオバマ氏は来年1月、大統領を退く。後任を決めることし11月の大統領選へ、野党の共和党にあっては、被爆国日本の核兵器保有を容認するような発言が飛び出す候補者の指名獲得が確実だ。アジアでも北朝鮮は、朝鮮労働党大会で「核兵器保有国」を宣言した。被爆国の日本政府は米国の「核の傘」から出ようとする気配はない。

 オバマ氏が提唱した「核兵器なき世界」の実現。それは、「オバマ氏頼み」でもあった側面は否めない。今回の米大統領訪問により、ヒロシマは一層の重荷を背負う。「ポスト・オバマ」時代の、ヒロシマの覚悟が問われる。(岡田浩平)

(2016年5月11日朝刊掲載)

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