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核廃絶へ「道」示して オバマ氏27日広島訪問 被爆者、進展を期待

 核兵器廃絶へ、被爆地から行動で示して―。主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に合わせ、オバマ米大統領が広島を訪れることが決まった10日、被爆者は声を重ねた。71年前のあの日、米国が落とした原爆に人生をゆがめられ、大切な家族を奪われた。「誰にも同じ思いをさせてはならない」との一心で27日の訪問を待つ。

 「清水の舞台から飛び降りる気持ちでの決断ではないか」。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(74)はこう受け止める。オバマ氏が「核兵器なき世界」を掲げた2009年のプラハ演説を挙げ、「それ以上のヒロシマ演説をし、廃絶への原動力になってほしい」と力を込めた。

 広島市では先月、サミットに先立つ外相会合があり、ケリー米国務長官が訪れたばかり。関連行事で参加各国の若者に被爆体験を証言した国重昌弘さん(85)=佐伯区=は、オバマ氏に原爆ドーム(中区)を見てほしいと願う。「ひどいやけどを負い、米国に敵討ちをとうわ言のように言っていたこともあった。いまは核兵器の恐ろしさを分かってもらい、廃絶につなげることが敵討ちと思う。歓迎したい」

 オバマ氏は被爆地に立ち、何を思うのか。原爆で妹を亡くし、自らも左目を失った寺前妙子さん(85)=安佐南区=は「たとえ大統領が謝ったとしても元には戻らない。どれほどひどい被害か、遺品を見て、証言を聞き、よく分かってもらいたい」と望む。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(71)は「プラハ演説で被爆者を期待させたが、それ以降は廃絶と相反する政策を進めてきた」と指摘。「ただ訪れるだけではなく、被爆地で廃絶への具体策を示してほしい」と求めた。

(2016年5月11日朝刊掲載)

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