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土肥院長 月内で退任 原爆病院

 広島赤十字・原爆病院(広島市中区)の土肥博雄院長(66)が4月1日、広島市中区に日本赤十字社(東京)が新設する中四国ブロック血液センターの所長に転任することが19日、分かった。同社は後任に石田照佳副院長(62)を選んだ。

 土肥氏は広島大医学部卒。1984年、広島赤十字病院医師となり、2004年から広島赤十字・原爆病院長。同年から、広島県や広島市、医療機関などでつくる放射線被曝(ひばく)者医療国際協力推進協議会(HICARE)会長も務める。専門は血液内科学。

 石田氏は九州大医学部卒。同学部助教授などを経て94年、広島赤十字・原爆病院に勤務。03年から副院長。専門は外科。(田中美千子)

被爆医療・支援を聞く がん医療への対応も充実を

 8年にわたり広島赤十字・原爆病院長を務めた土肥博雄氏が今春、被爆者医療の一線から退く。被爆者医療の今後の課題や、福島第1原発事故の被災地に対する被爆地の支援の在り方について聞いた。

  ―どんな医療を目指してきましたか。
 医師だけでなく職員にも原爆関連のシンポジウムや放射線被害の講習を受けさせ、被爆者医療に対する意識を高めてきた。放射線の影響を受けやすい子ども時代に被爆した人たちが「がん年齢」を迎え、近年は入院する被爆者の大半ががん患者だ。がん医療を被爆者医療と同義と捉え、さらなる診療の充実を図ってほしい。

  ―HICARE会長も8年間務めました。
 医療従事者の派遣や研修の受け入れ事業が活動の軸だが、さらにグローバルな活動が求められる。2010年には国際原子力機関(IAEA)と協力の覚書を結んだ。世界の核被害者を支えるさまざまな国際機関と緊密に連携してほしい。

  ―福島第1原発事故の被災地への支援は。
 福島県民はもちろん、原発作業員の健康調査を早期に着手すべきだ。低線量被曝の人体影響について、きちんと疫学調査をしなければならない。放射線被害に対応できる人材育成も被爆地の責務だ。広島大が10月から大学院博士課程に放射線災害からの復興を担う人材育成のプログラムを設ける。私も指導に加わる予定だ。

  (2012年3月20日朝刊掲載)

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