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オバマ氏5・27ヒロシマへ 市民ら思い交錯 

歴史的な出来事/退任前 何になる/謝罪してほしい

 原爆を落とした米国の現職大統領が、人類最初の被爆地に立つ日が来る。オバマ大統領の広島訪問の正式発表から一夜明けた11日、広島市中区の平和記念公園を訪れた市民や観光客の間に期待と注文が交錯した。核超大国のリーダーがヒロシマで何を感じ、何を発言するのか。大統領の言動に注目が集まった。

 「歴史的な出来事。素直にうれしい」。呉市の会社員古城浩昭さん(53)は出勤途中に同公園へ立ち寄り、被爆死した曽祖父母と祖父をしのんで原爆慰霊碑に手を合わせた。来年1月に退任するオバマ氏に「今後、絶対に核兵器を使わないという強い意志を次の大統領に引き継いで」と願った。

 同公園が通学路という中区の中学3年島田怜美さん(14)は「戦争を早く終わらせるために『原爆は必要だった』という米国の世論を変えるきっかけになれば」と期待する。

 「グレートニュースだ」と原爆資料館を見学した米国人ジェイム・ヘイズさん(56)。「広島の歴史を米国人は忘れてはいけない。発信力のあるオバマ氏なら核兵器廃絶のメッセージを世界に届けられる」と話した。

 一方、ポーランド人カタジュナ・ジェニンスカさん(32)は「大統領が広島に来て、何になるの。オバマ氏は核実験を続け、戦争もやめない。退任直前でリーダーシップをとれるのか」と肩をすくめた。台湾からの王玉林さん(56)は「核兵器に反対だが、日本はアジアで加害国だった歴史も忘れないで」と注文した。

 オバマ氏に厳しい声もあった。胎内被爆しためいが27歳の時に白血病で亡くなったという同公園のボランティアガイド北倉哲弘さん(71)=広島市南区=は「この場で謝罪してほしい。今でも米国を許せない」と語気を強めた。国民学校5年生のころ被爆した今田富士子さん(82)=広島市西区=は「罪のない人が大勢殺された。鎮魂の気持ちを示さない訪問なら意味がない」と受け止めた。

(2016年5月12日朝刊掲載)

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