×

ニュース

渡日治療委の活動終了 在韓被爆者対象 国制度開始で判断

 韓国の被爆者を日本に招き、無償で治療してきた在韓被爆者渡日治療広島委員会は12日、活動を終了すると発表した。昨年までの31年間で延べ572人を受け入れたが、国が1月、海外に住む被爆者(在外被爆者)への医療費の全額支給を始めたことなどから役割を終えたと判断した。

 委員会は1984年8月、広島市内の医師たち23人が呼び掛けて結成。全国からカンパを募り、広島県内を中心に12病院が受け入れに協力した。長年日本政府が在外被爆者を援護の外に置き、韓国政府と80年に始めた渡日治療も86年に打ち切る中、市民の連携で救援の道を開いた。

 委員会によると、韓国原爆被害者協会を通じて当初は年30~40人を招き、心臓病などの重症も治療した。高齢化で渡航が難しい人が増え、日本政府が2004年度に医療費の一部助成を始めたこともあって受け入れ数は減少。近年は年に3人程度だったという。

 被爆者援護法に基づく在外被爆者への全額支給を認めた昨年9月の最高裁判決を受け、12月から活動を終える方向で協議してきた。

 この日、委員会の4人が市役所で記者会見。河村譲会長は、設立に尽力した内科医の父虎太郎さん(87年に73歳で死去)に触れ、「父は『医療費が出るまで引退できん』と言っていたが、その日が来た。活動を支援してくれた多くの方々に感謝したい」と述べた。活動の歩みをまとめた冊子を300部作り、日韓の関係団体や県内の図書館に配る。(水川恭輔)

(2016年5月13日朝刊掲載)

年別アーカイブ