×

ニュース

オバマ氏5・27ヒロシマへ トルーマン氏と違う発言を 被爆者・森下さん 正当化に憤った面会から半世紀

 広島、長崎への原爆投下時の米国大統領トルーマン氏と被爆19年後に面会した被爆者の一人、森下弘さん(85)=広島市佐伯区=が、当日のやりとりや思いを記したメモを残していた。投下を正当化する発言を聞かされた際の疑問や憤りを伝える。現職大統領として初めてオバマ氏が広島市を訪れるのを前に読み返し、そこにはない「核兵器廃絶の責任」を核超大国の指導者に語ってほしいと願う。(水川恭輔)

 森下さんは1964年、米国の平和活動家の故バーバラ・レイノルズさんが提唱した「世界平和巡礼」に加わった。被爆者たち8人の一行で、同年5月5日、米ミズーリ州のトルーマン図書館を訪問。トルーマン氏と、被爆者の広島女学院大元学長、故松本卓夫さんとの対話を見守った。当日の宿舎で、その様子をはがき大のメモ帳3ページに書き残した。

 通訳を介したトルーマン氏の発言を「ひょんなことから戦うことになったが、二度とああいうことにならないように」「原爆によって多くの兵士の命が犠牲になる(50万?)のをくいとめることができた」などとつづる。

 自らの胸の内は「幼ない命の沢山あることを考えなかったか」「二三応答を交わしただけで(略)全くあっけない」。「あんな会見やらない方がましだ」(いずれも原文のまま)と一行の一人が憤った様子も書き留めていた。

 森下さんは広島一中(現国泰寺高)3年時に学徒動員先で被爆し、母親を亡くした。戦後、教職に就き、渡米前に長女を授かったこともあって、子どもの原爆死を強く意識していたという。「トルーマン氏には数多くの子どもたち非戦闘員の被害を考えてもらい、『すまなかった』の一言がほしかった」と振り返る。

 トルーマン氏の後、11人目の第44代大統領であるオバマ氏は、2009年4月のチェコ・プラハでの演説で投下国として廃絶へ行動する「道義的責任」に触れた。森下さんは「謝罪ではないが、オバマ氏個人の心中にそれに通じる思いをうかがえた」と感じた。

 トルーマン氏との面会から半世紀余り。今月27日に平和記念公園(中区)に立つオバマ氏の言動に期待する。「原爆資料館の展示を見て子どもたちの死に向き合ってほしい。『一緒に頑張ろう』との思いを抱かせるような核兵器廃絶の力強い宣言を聞きたい」

(2016年5月13日朝刊掲載)

年別アーカイブ