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愛宕山売却を表明 山口知事 岩国市長 防衛相・外相と面会

 山口県の二井関成知事は22日、防衛省で田中直紀防衛相と面会し、岩国市の愛宕山地域開発事業跡地(県住宅供給公社所有)について、国に売却する最終判断を伝えた。在沖縄米海兵隊の岩国基地への一部移転を日米両政府が否定し、県と市の在日米軍再編への基本姿勢を国が尊重する考えを示したことを踏まえ、判断留保を解除した。23日に公社と同省が売買契約を結ぶ。

 面会前に防衛、外務両省がそれぞれ大臣名の文書で県、市の照会事項に回答した。米軍再編を統一的なパッケージとする基本的考えを強調。普天間飛行場(沖縄県)移設の見通しが立たない間は厚木基地(神奈川県)から岩国基地への空母艦載機移転を認めないとの県と市の姿勢を「重く受け止める」とした。岩国基地や周辺に艦載機の恒常的な離着陸訓練施設を整備しない点も明記した。

 これを受け、二井知事は福田良彦市長とともに、田中防衛相に面会。知事は「納得できる。愛宕山の留保を解除したい」と売却手続きを進める考えを表明し、防衛相は「感謝申し上げる」と述べた。

 終了後、二井知事は記者団に、23日の公社理事会で売買契約の締結を議決する意向を表明。「また新たな負担増が出てきたり、普天間に先行して艦載機が来たりしないよう強く申し上げていく」と述べた。知事、市長は外務省で玄葉光一郎外相にも面会し、売却判断を伝えた。

 防衛省は跡地取得後、2014年を目標とする艦載機の移転に伴う米軍住宅建設に向け、12年度から設計を進める。(岡田浩平)

赤字解消へ折り合い 山口県・岩国市 「艦載機移転」が焦点

【解説】愛宕山売却

 【解説】曲折を経て、愛宕山地域開発事業跡地(岩国市)の国への売却が決着した。米国の在沖縄米海兵隊の岩国基地への移転断念を受け、米海軍厚木基地(神奈川県)から岩国基地への艦載機移転を着実に進めたい国側と、約169億円の跡地事業の赤字を解消したい山口県と岩国市が年度末ぎりぎりで折り合いを付けた格好だ。

 今後は艦載機移転の目標年2014年に向け、「米軍普天間飛行場(沖縄県)移設の見通しが立たない間は、艦載機の先行移転は認めない」という県市の基本方針が守られるかが最大の焦点となる。

 だが、再編のロードマップの見直し協議で密接に結び付いていた普天間移設と海兵隊のグアム移転は切り離され、「普天間固定化」の可能性は一段と高まっている。ロードマップの行き詰まりを象徴し、県市の基本方針も国防の名の下、ほごにされる恐れが全くないとはいえない。

 さらに追加負担への抗議として売却を留保した愛宕山跡地も国の手に渡る。国と今回交わした文書が新たなカードとなるが、国の見解は「全力で取り組む」「重く受け止めている」など努力目標とも受け取れる言葉が並び、どれだけの担保となるか、不透明だ。

 赤字解消に向けた「現実的な対応」として、米軍住宅の建設が計画される愛宕山跡地を売却する政治判断を下した県と市。普天間問題が置き去りにされ岩国への先行移転が進むような場合、国と対峙(たいじ)する手段と覚悟がどれほどあるのか。「国任せ」になっている危うさは否めない。(金刺大五)

愛宕山売却 「早く整備を」「最悪の判断」 岩国で期待と憤り

 岩国市の愛宕山地域開発事業跡地をめぐり、山口県の二井関成知事と同市の福田良彦市長が国への売却留保解除を決めた22日、地元岩国では憤りの声と地域振興への期待が交錯した。

 国は跡地に艦載機部隊向け住宅や市民が利用できる運動施設を建設する。市民団体「岩国の明るい未来を創る会」の原田俊一会長は「子どもたちのためにも早く整備を」と求め、決定を歓迎した。

 一方、米軍住宅化に反対する「愛宕山を守る会」の岡村寛世話人代表は「後世にとって最悪の判断」。同会は留保を解除しないよう19日に知事へ要請文を出したが回答はない。「説明があってしかるべきだ」。メンバーたちと23日県庁を訪れ、問いただす構えだ。

 在日米軍再編に協力姿勢の市議でつくる「岩国基地問題に関する議員連盟」の桑原敏幸会長は「国は今後、市との信頼関係を損なわないようにしてほしい」と注文した。(酒井亨、堀晋也)

(2012年3月23日朝刊掲載)

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