×

社説・コラム

[被爆者からオバマ氏へ] 訪問後の行動に注目 原田浩さん=広島市安佐南区

  ≪6歳の時、爆心地から約2キロの広島駅で被爆。広島市役所に入り、1993年4月~97年3月、原爆資料館長。被爆証言や平和行政に関する講演を続けている≫
 来る覚悟を決めたのは評価したいが、プラハ演説に始まって、広島で終わる、というのではたまらない。広島訪問を新たなスタートとして、残された任期、そして大統領を退任してから、どういう具体的な行動を起こすかに注目したい。

 そのためには、被爆資料や、2キロ以内で直接被爆した者の話―。ありのままを見て、聞いてほしい。もちろん、その様子を包み隠さず公開してほしい。

 そして、原爆投下がどんな意味を持ったのか、あらためて検証するきっかけにしてほしい。正当化の議論をもう一回掘り下げることで、日本と米国との相互理解がより深まるのではないか。安倍晋三首相と固く握手して日米同盟の強化を強調するだけでは、何をしに広島に来たのか、ということになるだろう。

 市民もただ星条旗を振って歓迎するのでなく、一人一人があの時何が起きたかをきちんと知り、ヒロシマについて自覚してほしい。広島市は、市民の意識を高めるよう、平和行政に取り組むべきだ。

 当日は長崎市の田上富久市長にも来てもらい、松井一実広島市長とともにオバマ大統領に同行してはどうか。長崎訪問は無理でも、ナガサキの声を直接届けられるはずだ。(二井理江)

(2016年5月14日朝刊掲載)

年別アーカイブ