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社説・コラム

[被爆者からオバマ氏へ] 原爆慰霊碑に誓いを 阿部静子さん=広島県海田町

  ≪結婚間もない18歳の時、爆心地から約1・5キロの広島市平塚町(現中区)で建物疎開作業中に被爆。オバマ氏が広島を訪れる27日に結成60年を迎える広島県被団協(坪井直理事長)で当初から被爆者運動に尽くしてきた≫
 苦しみ、人間ではないような死に方をした罪もない市民たち。その名簿を収める原爆慰霊碑に献花し、こうべを垂れてほしい。碑に刻むように「過ちは繰返しませぬから」という誓いを立てて、と願う。原爆資料館ではにおい、叫び声など、原爆投下直後の惨状を想像しながらの見学を望む。

 18歳の若さで原爆の熱線を浴び、顔や腕、手など右半身に大やけどを負った。やけどが治っても顔は真っ赤。外に出ると「赤鬼」とはやし立てられた。死のうとしたこともある。ケロイドの整形手術は18回した。目が輝き、なめらかな肌の子どもたちに同じ体験をさせてはならない。そう思い、4年前に胃がんを患うまで証言活動をしてきた。

 1964年に広島・長崎世界平和巡礼団に参加し、原爆を投下した時の大統領、トルーマン氏と米国で面会した。原爆投下は必要悪と言われ失望した。その後もさまざまな平和活動をしてきたが、核兵器はなくならない。米国は新たな核実験を繰り返す。失望感は変わらない。

 ノーベル平和賞を受け、心の底に核兵器廃絶の願望を持つ大統領が来る。知ってほしいのは恨みでなく、原爆を使うことで起こる実情。被爆地広島でどんな心を示すか見届けたい。(渡辺裕明)

(2016年5月18日朝刊掲載)

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