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社説・コラム

[被爆者からオバマ氏へ] 世界の注目集めよう 山本定男さん=広島市東区

  ≪広島二中(現観音高)2年時、爆心地から約2・5キロの東練兵場(現広島市東区)で被爆。主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に合わせ、広島、長崎両市が三重県伊勢市で開く原爆展で28日、被爆体験を語る≫
 広島二中では、1年生と2年生が1日交代で建物疎開作業に駆り出されていた。8月6日は1年生の作業日で、爆心地から約500メートルの本川の土手に集まっていたほとんどが即死した。その地にある慰霊碑には1年生323人の名前が刻まれている。1日違えば、私が死んでいたかもしれない。生き残った者の使命として被爆体験を国内外に訴えてきた。

 昨年6月、米ワシントンを訪れ、広島・長崎両市などの原爆展で証言する前にスミソニアン航空宇宙博物館でB29爆撃機「エノラ・ゲイ」を見た。ガイドから被害についての言及はなく、誇らしげに展示されていた。悔しくてたまらなかった。

 ただ現地で証言を重ねるうち、市民たちが熱心に耳を傾けてくれる様子に、悔しさは「諦めずに語り続けなければならない」という使命感に変わった。

 4月に広島市であった外相会合では報道機関向けの証言会に出たが、海外の記者は来なかった。被爆の実態は国際社会でまだ知られていないのではないか、と思う。オバマ米大統領の訪問が、世界の注目を被爆地に集めるきっかけになってほしい。28日の証言にも海外メディアが来るよう期待している。(森戸新士)

(2016年5月19日朝刊掲載)

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