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平和の思い伝える品 原爆焼発見 延時さん「あるべきところへ」

 第2次世界大戦後、広島市の爆心地近くの土を混ぜて制作された「原爆焼」を所有していた、古美術店経営、延時立志さん(84)=福山市住吉町。「平和への思いを伝える品として後世に残したい」との思いを抱く。

 古美術店を開いて約45年。これまでさまざまな骨董(こっとう)品に出合ったが「一生忘れられない品になった」と、そっと原爆焼を手に取った。

 もともと所有していた田和俊輔さんとは年賀状をやりとりし、よく電話をする仲だった。田和さんは生前、延時さんに原爆焼を見せたことがあったという。延時さんは「珍しいが、値段をつける物ではない」と田和さんに返却していた。

 昨年田和さんが亡くなり遺族に遺品の整理を頼まれ、原爆焼と再会した。「あるべきところへ置かなければ」と迷わず寄贈を決めた。「小さな茶わんの中に、悲しい歴史や多くの人の思いが詰まっている」と語る。

 田和さんの次女道佳さん(55)=兵庫県西宮市=は「長年守ってきた物が郷土に寄贈される。父も喜ぶだろう」と話している。(福田彩乃)

(2016年5月19日朝刊掲載)

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