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社説・コラム

『記者縦横』 平和の尊さ ひろしまFFに思う

■報道部・奥田美奈子

 広島県外の友人に「祭りの見どころは」と問われるたび、答えに窮してきた。3~5日に広島市中区の平和大通り一帯であった、ひろしまフラワーフェスティバル(FF)のことだ。華やかなパレードにステージ、会場を彩る花々…。紋切り型の表現では、うまく伝わらない。

 FFは1977年に始まり、40回の節目を迎えた。昨年末から過去の紙面を繰り、草創期を知る人を取材した。会期中は後輩とともに「この祭りの魅力は何ですか」と問い掛けた。

 歌や踊りで出演する市民は「大きな舞台に立ててうれしい」と喜ぶ。バトンに打ち込む一家は「わが家の連休にFF以外の選択肢はない」と言い切った。広島に暮らす外国人は「地元住民や同郷の人と触れ合える貴重な3日間」と位置づける。「この場を借り、熊本地震への支援の輪を広げたい」と話す人もいた。それぞれの思いが積み重なり、今のFFがあるということを実感できた。

 平和大通りにいた高齢男性は、身内に被爆者がいると打ち明けた上で「ここで、にぎやかに祭りを開いていることに意味がある」と語った。「戦争があった過去を思いながら、今ある幸せを感じられる」

 歩行者天国になった平和大通りを見渡した。家族連れやカップルがそぞろ歩きを楽しみ、誰もが笑顔を見せていた。会場に近い原爆資料館を訪ね、71年前の惨禍と見比べれば、平和の尊さにも気付く。見どころは、これだと思った。

(2016年5月20日朝刊掲載)

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