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オバマ氏へ8・6手記 広島で被爆の東京の千葉さん 「人間らしく死ぬことも許されなかった」

 東京都杉並区在住の千葉(旧姓重高)ヨシコさん(83)が、自らの被爆体験を日英両文で伝える手記を、オバマ米大統領宛てにホワイトハウスへ送った。広島原爆に母を奪われ、自らも生死の境をさまよった千葉さん。「大統領は原爆がいかに市民を苦しめたか知り、広島で核兵器廃絶を誓ってほしい」と願う。(田中美千子)

 手記は「その日1945・8・6~きのこ雲の下」でA5判、74ページ。2005年にまとめた手記を加筆修正し被爆70年の昨夏に千部を自費出版した。オバマ氏の広島訪問のニュースを受け、千葉さんは「被害の実態をじかに見てもらえると思うと、喜びが湧いた」。歓迎の言葉を添え、40冊を郵送したという。併せて、広島市や首相官邸などにも送った。

 被爆時は県立広島第二高等女学校(現皆実高)1年生。学徒動員先の東練兵場(現東区)で草取り中に顔や腕を焼かれ、一時は昏睡(こんすい)状態に陥った。現中区で勤労奉仕中に被爆した母とは救護所で再会したが、45年10月に亡くなったという。

 手記では、大やけどを負いながら必死に逃げたあの日から母の死までを振り返った。救護所で「おかあちゃん」と叫んで絶命した幼子の姿も記し「人間が人間らしく生き、死ぬことも許されなかった」とつづる。

 千葉さんは高校卒業後に東京へ移住。差別を恐れ、娘2人にさえ長年、体験を語らなかったという。「手記にしたのは、原爆の悲惨さを国内外に知らせたいから。大統領は被爆資料を直視し、他の被爆者の声も聞いてほしい」と期待を寄せた。

(2016年5月20日朝刊掲載)

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