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社説・コラム

[被爆者からオバマ氏へ] 悲惨な姿を心に刻んで 朴南珠(パク・ナムジュ)さん(83)=広島市西区

 ≪両親は韓国出身。広島で生まれ育った。13歳の時、広島市福島町(現西区)で被爆。修学旅行生や韓国人留学生に被爆体験を語る活動に2003年から取り組んでいる≫
 オバマ米大統領には原爆のむごさを理解してもらいたい。どんなに人を傷つけるか。原爆資料館に並ぶ被爆者の写真を心に焼き付けてもらいたい。そして原爆という殺りく兵器が二度と使われないよう、次期大統領に核兵器廃絶への挑戦を引き継ぐと誓ってほしい。

 原爆投下直後、両腕の皮膚が真っ赤に焼けただれた人たちが「熱い」と言いながら歩いていた。力尽きて道に倒れ、時間がたつと皮膚はどす黒くなって傷口にはうじ虫がわいた。今もその光景を思い出すと、恐怖や、何もしてあげられなかった後悔で涙が出る。

 証言活動をすると「本で学習したけど話を聞くと恐ろしさがより分かった」という感想が多い。オバマ氏も被爆者の声を聞き、被爆当時の恐怖や苦しさに加え、生き残ったことさえ申し訳なく思う私たちの感情に触れてほしい。

 戦時中は日米間だけでなく、世界中で国家間が傷つけ合った。でも戦後、多くの日本人が、被爆者健康手帳の取得や放射線障害の治療について悩む韓国人被爆者をサポートしてくれた。私もそんな行動に感銘を受け、国籍を超えて協力する大切さを学んだ。各国が核兵器で威嚇し合う体制に早く終止符を打つよう、オバマ氏は世界に呼び掛けるべきだ。(久保友美恵)

(2016年5月20日朝刊掲載)

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