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社説・コラム

[被爆者からオバマ氏へ] 保有国に訪問促して 木村英雄さん=広島市安佐南区

  ≪三篠国民学校(現三篠小、広島市西区)4年生の時、爆心地から約1・4キロにあった仮校舎で被爆した。2番目の姉、春江さん(17)も職場の広島県産業奨励館(現原爆ドーム)で被爆、遺体は見つかっていない≫
 原爆ドームは、姉を含めて多くの遺体が眠る原爆犠牲者の墓標だ。政治情勢にとらわれる大国のリーダーとしてではなく、一人の人間として訪れてほしい。原爆投下は戦争終結に必要だったと言われるが、どれほど多くの人が苦しんだか。肌で感じてもらいたい。

 被爆直後、中広町(現西区)の自宅そばで無事だった母や姉2人と会い、三滝山の麓に逃げた。顔の皮が垂れ下がり、目玉が飛び出した人が大勢いた。まさに地獄絵図。いや、地獄より悲惨だった。

 自宅で被爆した母も6年後に53歳で亡くなった。その母が受け取った罹災証明書を2014年、原爆資料館に寄贈した。原爆に翻弄(ほんろう)された多くの人生があることを後世に伝えたかったからだ。資料館の展示を見ることで、人数だけでは分からない被爆者一人一人の思い、苦しみを感じてもらえると信じている。

 原爆投下に対する謝罪の有無は関係ない。失われた命は戻らないし、求めても核兵器廃絶は進まない。広島で感じたことをエネルギーにして、核兵器保有国のトップに「広島を見てこい」と呼び掛けてほしい。この広島訪問が次の行動につながることこそ、私たち被爆者の願いだ。(柳本真宏)

(2016年5月23日朝刊掲載)

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