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野田首相 存在感示せず 滞在18時間 外交の好機逃す

 第2回核安全保障サミットに出席した野田佳彦首相は27日午後、会議終了を待たずにソウルから帰国した。会議では福島第1原発事故の教訓を核テロ対策に生かすべきだと主張。ただ、米中韓やロシアとの2カ国首脳会談はいずれも数分間だけで、存在感を示せなかった。

「核なき世界」の実現を最終目標に位置付けるサミットで、核兵器廃絶を訴えることもなかった。

 「参加の第一目的は事故の教訓を国際社会と共有することだ」。野田首相は記者団にサミット参加の意義を説明した。さらにオバマ米大統領や中国の胡錦濤国家主席たちの意見交換で、北朝鮮による「衛星」打ち上げ阻止に向け、「意思疎通できた」と強調した。

 とはいえ国会日程に拘束されて滞在時間は約18時間。首脳級との会談はいずれも立ち話程度にとどまった。内容も対北朝鮮外交での協力の確認に終始した。

 対照的にオバマ氏は25日に現地入りし、北朝鮮と韓国を隔てる非武装地帯(DMZ)を視察。26日の韓国外国語大での演説では核兵器を追加削減する用意があると表明した。中韓ロの首脳と正式会談した。

 消費税増税関連法案をめぐる民主党の党内手続きが難航する中、外務省幹部は「国内情勢が正念場。首相はサミットに参加するだけで精いっぱい」と漏らした。

 前回同様、核保有5カ国に加え、インド、パキスタン、事実上の核保有国とされるイスラエルも参加した。将来の非核化の契機にもなりうる場で、日本は首脳外交を繰り広げる好機を逸した。(田中美千子)

(2012年3月28日朝刊掲載)

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