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12年度中電 原発計画すべて「未定」 推進の姿勢は維持

 中国電力は27日、2012年度の電力供給計画を発表し、上関原子力発電所(山口県上関町)計画の本体着工、運転開始の時期を未定とした。建設中の島根原発3号機(松江市)の運転開始も同じく未定となった。国が夏をめどにまとめるエネルギー政策の議論をみながら供給計画を見直す。(山本和明)

 定期検査中の島根1、2号機の再稼働時期に加え、12年度以降の供給力も未定とした。また、12年度以降の販売電力量の予想も未定。この日、経済産業省に計画を届け出たが、これらを未定として提出するのは異例となる。

 広島市中区の本社で会見した苅田知英社長は「(原発の)再稼働や運転開始時期を見通せない。原子力の開発は重要で、理解を得る努力をしたい」とし、引き続き原発を推進する考えを示した。

 上関原発1号機は今年6月の着工、18年3月の運転開始を目指していたが、福島第1原発の事故を受け昨年3月に準備工事を中断。苅田社長は「事故を踏まえた安全基準の見直しなどを反映し、より安全で安心できる発電所にする」と述べた。

 ほぼ完成している島根3号機は水密扉の設置などの安全対策が完了したとし、「地元の理解を得た上で運転開始したい」と強調。ただ1、2号機を含め作業中のストレステスト(耐性評価)の提出時期は、未定とした。

 島根1号機は稼働から38年。原発の運転を原則40年とする政府の方針について「規制の中身が分からず、動向を見守る」とし、「気持ちとしては40年を超えて運転したい」と話した。

 供給計画は電気事業法に基づき、今後10年間に想定される販売電力量やピーク時の供給力、設備への投資方針を国へ提出する。

原発計画すべて「未定」

 中国電力が上関原発と島根原発3号機の運転開始時期を未定とした27日、立地自治体や住民は、原発の今後の位置付けについて国が方針を定めるよう要望。計画の白紙撤回を訴える声も上がった。

 原発誘致に伴う国の交付金で地域振興を図る上関町。推進派の上関町まちづくり連絡協議会の井上勝美事務局長は「一企業で決められる問題ではない」と理解を示す。安全対策の重要性を指摘し、「どこまで対策が必要か。客観的な検証を踏まえて明確な指針を」と国に求めた。

 一方、予定地対岸の祝島住民でつくる「上関原発を建てさせない祝島島民の会」の山戸孝事務局次長は「推進派は建設に未練を残し、われわれは事故に不安を抱き続ける。住民には残酷な方針」と白紙撤回を求めた。

 柏原重海町長は「国が方針を打ち出していないことを考えると致し方ない」。山口県の二井関成知事は「国のエネルギー政策の中で原発をどう位置付け、新増設計画をどう定めるのか。国民的合意を得ながら国が明確に示すべきだ」とした。

 ほぼ完成した島根3号機が立地する松江市。市政策企画課の錦織裕司課長は、国の原発政策が固まらない現状を踏まえ「今はこれ以上の計画を出しようがない」。島根県の大国羊一危機管理監は「中電が主体的に原発を稼働できる状況ではない。どの原発がなぜ必要なのか、国の説明が重要」と強調した。

 市民団体「平和フォーラムしまね」の杉谷肇代表は「福島の事故原因すらはっきりしない中で原発を動かすのは民意に背いている」と訴えた。(久保田剛、樋口浩二、山田英和)


≪中国電力の原発 ≫

 島根原発は1号機(出力46万キロワット)と2号機(82万キロワット)が定期検査中で再稼働のめどが立っていない。建設中の3号機(137万3千キロワット)の運転開始も未定。上関はこれまで1号機(同)が2018年3月、2号機(同)が22年度の運転開始を目指していた。

(2012年3月28日朝刊計画)

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