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社説・コラム

[被爆者からオバマ氏へ] 生涯続く辛苦直視を 児玉光雄さん=広島市南区

  ≪広島一中(現国泰寺高)1年の時、爆心地から約870メートルの木造平屋の校舎で被爆。英文体験記をことし3月に自費出版した≫
 原爆は、単に威力の大きい爆弾とは違う。熱線、爆風による被害だけでなく、放射線が染色体を傷つけ、被爆者は一生涯にわたって健康影響に苦しむ。どれほど非人道的か。同級生のほとんどが今日まで生きられなかった実態を突き付け、真剣に考えてもらいたい。

 同じ校舎にいたか、近くの動員現場に出ていた同級生300人余りのうち、生き残ったのは19人。その級友も戦後、放射線が影響する病気に次々と襲われた。

 1人は白血病で大学卒業前に無念の死をとげ、別の1人もやはり白血病で30歳代で妻子を残して逝った。その後は、複数の臓器ががん化する「重複がん」が増え、多い人は六つ、七つ発症した末に亡くなった。私も大腸、胃、甲状腺にがんを患い、皮膚がんは17回手術した。19人のうち今も健在なのは2人だけだ。

 被爆者全体でみても、白血病に移行しやすい骨髄異形成症候群(MDS)が今も増えている。核兵器を存在させ続けるのは、人類にとって自殺行為だ。警鐘を鳴らすのが生き残った使命と考え、級友の死も記した英文体験記を3月に自費出版し、米国に届けた。

 広島の地を踏めば、市街地の上空でさく裂した原爆が市民の営みを奪った揺るぎない事実に向き合うことになる。核兵器は人類の悪だと世界に宣言し、ゼロにするため行動してほしい。(水川恭輔)

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 オバマ米大統領が27日、現職大統領として初めて被爆地広島を訪れる。オバマ氏に一番伝えたいことは―。被爆者に聞いた。

(2016年5月12日朝刊掲載)

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