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人間としての言葉を あすオバマ氏広島訪問

 米国による原爆投下から71年の夏を前に、被爆地広島は27日、オバマ大統領を迎える。現職の大統領としては初めて。被爆者や市民の呼び掛けに呼応したかのように、オバマ氏自ら、核兵器の惨禍と廃絶への願いを発信する原点の地への訪問を望んだ。紡いできた「ノーモア・ヒロシマ」の訴えを伝える一日となる。

 オバマ氏が足を踏み入れる平和記念公園(広島市中区)。一帯にはかつて町があり、人々の暮らしがあった。昨年8月5日までに亡くなった29万7684人の原爆死没者名簿が納められた原爆慰霊碑前に立てば、「平和の灯(ともしび)」越しに原爆ドームがたたずむ。もの言わぬ被爆の証人が、オバマ氏へ、被爆地に立つ意味を問い掛ける瞬間になる。

 オバマ氏の広島訪問が発表された10日以降、私たちは被爆者の声を聞いた。歓迎の声もある。「和解」という言葉では言い表せない思いを抱く人もいた。謝罪よりも一日も早く核兵器廃絶への取り組みを、との声も。ただ多くは、オバマ氏に対し、一人の人間としての言葉を求めた。被爆地で見たこと、感じたことをそのまま聞きたい、と―。

 2009年4月。チェコ・プラハで25分の演説をしたオバマ氏は、核兵器を使った唯一の国として行動する道義的責任に触れ、「米国は核兵器のない平和で安全な世界を目指す」と約束した。当時の興奮はしかし、次第に色あせた。その後、一向に廃絶へと進まない国際社会の停滞にヒロシマは落胆した。

 オバマ氏は自ら掲げた「核兵器なき世界」に向け、被爆地から国際社会を再び揺り動かせるか。そして被爆地で何を語り、あるいは何を語らないのか。ヒロシマにとって歴史的な日となるのか。世界が注視する。(岡田浩平)

(2016年5月26日朝刊掲載)

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