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米艦載機岩国移転計画 県西部 騒音増を警戒

 米海兵隊岩国基地(岩国市)への空母艦載機移転計画が進む中、県西部の市町が米軍機による低空飛行訓練や騒音の増大に警戒感を強めている。国設置の騒音測定器は沿岸部に偏るため、廿日市市は山間部への独自設置の検討を始めた。北広島、安芸太田両町も設置を研究する。市民団体は「実態把握につながる」と評価している。(桑原正敏、畑山尚史)

 低空飛行の目撃件数は県の2010年度まとめでは、県内8市町で前年比674件増の1479件。目撃日数は同23日増の236日だった。市町別で日数の最多は北広島町の181日。廿日市市118日、大竹市45日と続き県西部に集中する。

 廿日市市は、新年度にも西中国山地の吉和地域に騒音測定器を新設する方針だ。総務課は「山間部のデータも蓄積できる。県や国への報告の裏付けになる」と説明する。

 北広島町では町議会が米軍機の低空飛行訓練などに絡む町民の陳情を受け、今月の定例会で、県と町に測定器設置を求める決議をした。町は「設置場所の研究を進めたい」と前向きに応じる。

 米軍機の騒音把握は、中国四国防衛局が県内や岩国市など計19カ所に測定器を設置。県西部は廿日市、大竹市各2、江田島市1の計5カ所で、いずれも海岸や島しょ部。低空飛行ルートや訓練空域がある山間部にないため、住民の目撃情報に頼らざるを得ない。

 ただ、自治体間で温度差もある。市内2カ所に国の測定器がある大竹市は「新設の予定はない」とする。一方、安芸太田町は「町民からの情報提供が増えており、設置を検討していく」。山陰の浜田市も昨年12月に測定器を独自設置した。

 岩国基地の拡張・強化に反対する県西部住民の会の坂本千尋事務局長は「艦載機移転への危機感の表れ」と指摘。「山間部へ測定器が設置されれば、各地の目撃情報や被害と照らし合わせて米軍機の飛行実態の特定につながる」とする。

≪米空母艦載機移転計画≫
 在日米軍再編に伴い米海軍厚木基地(神奈川県)の空母艦載機59機を2014年までに米海兵隊岩国基地(岩国市)へ移転する計画。同基地では滑走路が沖合移設された。一方で、基地騒音や移転計画をめぐる訴訟が係争中。

(2012年3月30日朝刊掲載)

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