×

ニュース

「廃絶 道筋見えぬ」 被爆者、落胆や違和感も オバマ氏広島訪問

 原爆投下時の米大統領トルーマン氏と被爆19年後に面会した森下弘さん(85)=広島市佐伯区=は、平和大通り南側の人垣から、規制線で封鎖された平和記念公園を見詰めた。

 「他の核兵器保有国の首脳に影響を与える可能性もあり、訪問自体は評価したい」と森下さん。ただ、オバマ氏は演説で「私が生きているうちに達成できないかもしれない」と核兵器廃絶の難しさにあらためて触れた。「彼もまた、トルーマンと同じ現実を見据えた政治家。もっと多くの被爆者を会場に招き、廃絶に向けて踏み込んだ言葉を語ってほしかった」と残念がった。

 広島県被団協の佐久間邦彦理事長(71)は、中区の事務所でテレビ中継に見入った。演説に対し「私たちが謝罪を求めないのは、核兵器廃絶へリーダーシップを取ってほしいとの思いから。『核兵器のない世界』への具体的な道筋を示さず、来た意味がなかった」と落胆を隠さない。日米両首脳が「同盟」という言葉を繰り返し使ったことにも「被爆地や被爆者の存在を軍事同盟強化のだしにされたようだ」と憤った。

 オバマ氏が原爆資料館を視察した時間は約10分間。爆心地から約330メートルの至近距離で被爆した高橋匡さん(90)=広島市南区=は「資料館を見た感想を一言も語らなかった」と違和感を覚えた。あの日、広島電信局職員だった高橋さんは炎の竜巻に2度襲われ、翌日以降は同僚の死体収容に当たった。その後も助けられなかった同僚の夢を見続けた。「まともに見学すれば、何か言わずにはいられないはず。彼は本当の意味で広島を訪れたのだろうか」。自宅で、そっとつぶやいた。(明知隼二、新谷枝里子)

(2016年5月28日朝刊掲載)

年別アーカイブ