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社説・コラム

大統領訪問 山口の被爆者らに聞く オバマ氏広島訪問

「最初と最後の被爆地に」

 被爆者の硯谷(すずりや)文昭さん(85)は周南市緑町の自宅で、テレビの中継画面を見つめた。「勇気を持って来てくれた。ヒロシマ、ナガサキを最初と最後の被爆地にしてほしい」と話し、涙を拭った。

 自宅のあった広島市南観音町(現広島市西区)で、勤労奉仕が始まるのを待っていて熱線を浴びた。20代後半から倦怠(けんたい)感が続き、極度の貧血で入退院を繰り返した。「人並みの健康を下さい」とつづった体験談は2013年、広島市長が平和記念式典で読み上げる平和宣言に引用された。

 周南市内の学校で、子どもたちに被爆体験を伝え続ける。「オバマ氏のスピーチでの言葉通りになれば素晴らしいが、核兵器廃絶までの道のりは不可能にも思えるほど遠い。それでも二度と使ってはいけないと言い続けなければならない」と訴えた。(桑田勇樹)

「よき隣人」を真剣に考えて

 岩国市車町の車第二自治会長の若佐賢治さん(62)は岩国基地そばで、「オバマ大統領は周辺の住宅地などを見て『よき隣人』とはどういうことか、真剣に考えるきっかけにしてほしい」と願った。

 2017年ごろとされる米海軍厚木基地(神奈川県)からの艦載機部隊移転が迫る中、「米兵が増えるのは正直、不安だ」と明かす。車町周辺では岩国基地関連の事件や事故が発生してきた。

 沖縄での米軍属による女性遺棄事件について、オバマ氏は25日、「深い遺憾の意」を表明。若佐さんは「米国のトップとしてしっかり責任を取る覚悟がなければ、基地周辺住民の不安解消にはつながらない」と強調した。

「核廃絶の種が芽吹き始めた」

 外務省のユース非核特使で、山口大国際総合科学部2年の松岡朱音さん(19)。山口市内でテレビ中継を見てスピーチに聞き入った。「ようやく核廃絶の種が芽吹き始めた」と受け止める。

 呉市出身で高校3年のときに広島市であった「軍縮・不拡散イニシアチブ」の外相会議で、「各国の代表者が被爆地を訪れて」と訴えた。今回の訪問で思いが通じた形となり、「歴史の変わり目になる」と歓迎した。

 「核廃絶をあらためて表明するだけでなく、戦争や武器をなくしていくという大統領の発言は真意だろう」と感じた。「日本の若い世代も世界の国々の歴史を学び、国境を超えて平和な世界の実現を考えていく必要がある」

(2016年5月28日朝刊掲載)

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