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被爆者、願い新たに オバマ氏「ヒロシマ演説」から一夜

伊東さん テロ根絶にも期待/近藤さん 新時代の到来喜ぶ

 世界の注目を集めたオバマ米大統領の広島訪問。平和記念公園(広島市中区)での行事に招待された被爆者の伊東次男さん(81)=安芸区、オバマ氏が演説で触れた被爆者とみられる兵庫県三木市の近藤紘子さん(71)の2人は28日、「ヒロシマ演説」を思い返し、核兵器なき世界の実現を願った。(水川恭輔)

 「『喜んでくれ』と心の中で亡き長男につぶやきながら見守りました。原爆慰霊碑への献花は戦争、テロのない平和への誓いでもあるはずですから」。伊東さんは、オバマ氏の献花の瞬間をそう振り返った。

 原爆で兄宏さん=当時(12)=を、2001年の米中枢同時テロで長男和重さん=同(35)=を亡くした。会場には2人の遺影をかばんに入れて持ち込んだ。「演説が各国のリーダーの心に変化をもたらし、核兵器はもちろん、人をあやめる武器全ての廃絶の機運が高まってほしい」

 一方、演説でオバマ氏は「ある男性」と「ある女性」の2人の被爆者を挙げた。男性は被爆死した米兵捕虜を調べ、行事に招かれた歴史研究家の森重昭さん(79)=西区、女性は近藤さんとみられる。

 演説では「ある女性は、飛行機を飛ばし原爆を投下した操縦士を許した。本当に憎むべきなのは戦争そのものであると気付いたからだ」と言及。近藤さんの父親は被爆の惨状を米国で訴え、原爆孤児らの救済に尽力した谷本清・広島流川教会牧師(1986年死去)。近藤さんは、父とエノラ・ゲイ号の元副操縦士との面会に立ち会っている。

 近藤さんは「大統領が被爆者の思いに触れる時代が来たのがうれしい。世界のみんなが戦争の痛みについて考えてほしい」と語った。

(2016年5月29日朝刊掲載)

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