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社説・コラム

天風録 「ヘリコプターマネー」

 耳をつんざくような、ごう音と強風。おとといヘリコプターで降り立ったオバマ米大統領の話題で広島の街はまだ持ち切りである。原爆慰霊碑の前はきのうも人、人、人…▲訪問自体が歴史的という声もあれば、駆け足で何が分かる、という声もある。評価は当分の間定まるまい。それでも核兵器なき世界へ向け、国際世論に一陣の風を吹かせたことは確かだ▲政界に渦巻く話題は「ヘリコプターマネー」という。定義はあいまいだが、空からお金をばらまくように景気を刺激する策らしい。プレミアム商品券や子育てクーポン…。消費税増税を延期した上で、5兆円を超すお金をちまたにあふれさせる案が浮かび上がった▲「リーマン・ショック前に似た危機だ」。首相はそうあおるが、もし本当なら国民の財布のひもはどこまで緩むだろうか。家電エコポイント制度など、長続きしなかった過去の政策への反省も見えない。国民の不安を、またも置き去りにしたままで▲この国にのしかかる借金の額には、耳をふさぎたくなる。子や孫に先送りしていいはずがない。少々ふらつき始めたアベノミクスというヘリコプターを、安全な場所に早く着陸させてほしいのだが。

(2016年5月29日朝刊掲載)

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