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防災体制 一斉に強化 島根原発30キロ圏自治体

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)30キロ圏の島根、鳥取県と島根県内3市で、本年度から原子力防災体制を強化する動きが相次いでいる。政府による防災対策重点地域の30キロ圏への拡大を受け、原発事故を想定した避難計画の策定など業務量が急増しているためだ。ただ、根本的なマンパワー不足は解消されておらず、国の支援や、自治体間の連携強化の必要性を訴える声も出ている。(樋口浩二)

 出雲市は4月、従来の防災交通課から交通部門を切り離し、防災安全課を新設。原子力防災を担うスタッフは2人から6人に増える。責任者として防災安全管理監も置いた。

 長岡秀人市長は「市民の安心安全の確保は今後の市政運営の柱」と、狙いを説く。

 雲南市は、危機管理室を総務課から独立させ、1人増の4人体制とした。「急がれる避難計画の策定がメーンの仕事」という。

 一方、政府がヨウ素材の配備や屋内退避が必要とする「放射性ヨウ素防護地域(PPA)」は、原発50キロ圏がエリアとなる。町の一部が入る奥出雲町は「国が具体的な業務を示してくれば、増員も検討したい」とする。

 しかし、原発立地市の松江市以外は、福島第1原発事故を受け、「何の備えもなく、突然原子力防災を担うことになった」(安来市)のが実態だ。

 同市の場合、職員4人で原子力以外の風水害対策も含めた防災全般と、防犯も業務の対象だ。松本城太郎統括危機管理監は「単なる増員では意味がない。立地自治体や国と連携し、専門知識を持った人材を早急に育てる仕組みづくりが必要」と指摘する。

 30キロ圏の住民避難計画の策定を主導する島根県は、避難対策室を新設するなどし、兼務を含めた担当職員を従来の3倍近くの32人に増やした。

 大国羊一危機管理監は「原発関連の交付金を、人件費に充てられるようなルール作りを国に要望することも検討したい」と話す。

 鳥取県は危機管理局内に原子力安全対策室(5人)を設け、避難計画の策定や放射線監視(モニタリング)を兼務も合わせ計19人で担う。

<島根原発周辺自治体の原子力防災体制強化>(かっこ内は担当者数の変化)

島根県 避難対策室の新設、地域防災計画担当参事の配置、原子力環境センターの内室化(11→32人)
鳥取県 原子力安全対策室の新設と、モニタリング担当者の増員(3→19人)
出雲市 防災安全管理監、危機管理アドバイザー(仮称、5月)の配置(2→6人)
雲南市 危機管理室を総務課から独立、統括危機管理監の配置(3→4人)
安来市 危機管理室を課に昇格、統括危機管理監の配置(3→4人)

(2012年4月5日朝刊掲載)

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