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福島の「無念」 上映広がる 広島の団体制作アニメ 26都道府県・海外で予定

東電も教訓継承へ活用

 東日本大震災の被災者と交流する広島市の市民団体「まち物語制作委員会」(新沢孝重代表)が手掛けたアニメ「無念」の自主上映会が、全国で広がっている。震災から5年がたち、記憶の風化を防ごうと、福島県の被災者たちの体験を描いた。7月末までに26都道府県と海外の約270会場で上映を予定し、東京電力も福島県内で社員研修に用いている。(栾暁雨)

 約1時間の「無念」は3月に完成。福島第1原発事故の影響で国が避難指示を出した同県浪江町の消防団員や住民が撤退を余儀なくされた悔しさや、風評被害への憤りなどを描く。映画の出張映写などを手掛ける広島市のグループが上映会を呼び掛け、広島、福島県を中心に市民団体、学校などから申し込みが相次いでいる。

 原発事故の対応に当たる東京電力福島復興本社(福島県富岡町)は「震災当時の状況をあらためて知り、復興を考えるきっかけにしたい」と同県内の社員を対象に上映会を4月に開き、今後も予定する。米ニューヨークとフランス・リヨン市の市民団体からもインターネットを通じて申し込みがあった。

 同制作委員会は2012年、福島県ゆかりの物語や被災者の体験を聞き取り、紙芝居にして上演する活動を開始。アニメは初めて制作した。制作を担った広島市職員福本英伸さん(59)=廿日市市=は「原発事故の実態を広く伝えるきっかけにしたい」と強調。上映会を呼び掛けるシネマキャラバンVAGの友川千寿美副代表(63)=広島市南区=は「福島の無念を忘れてはいけない。放射線の恐ろしさを知る広島だからこそ寄り添いたい」と話す。

 シネマキャラバンVAG Tel082(285)8165。

(2016年6月1日朝刊掲載)

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