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被爆体験 魂の絵画 中区で入野忠芳さん作品展

 被爆体験を創作の原点とする画家の入野忠芳さん(72)=広島市東区=の絵画展が5日、中区の福屋八丁堀本店で始まった。被爆樹木を描いた作品のほか、中止になった東京・目黒区美術館の原爆美術展に出品予定だった初期の代表作も並ぶ。

 描き続ける巨樹シリーズから新作41点を展示。被爆5年後に再び芽吹いたと伝わる頼山陽史跡資料館(中区)のクロガネモチや鹿児島県屋久島の縄文杉など、自然や戦争を生き延びた樹木を墨と岩絵の具で表現している。

 1960年代から前衛的な作風の洋画家として活躍。目黒区美術館から出品依頼を受けていた「不確かな行方」(69年)は、不穏な赤い雲の立ち込める画面が混迷する世界情勢を暗示。ほかに、原爆ドームの内部を描いた作品など計5点の初期作を展示している。

 「原発事故後だからこそ開かれるべき展覧会だった。広島の人々だけでも見てほしい」と入野さんは話した。11日まで。(西村文)

(2012年4月6日朝刊掲載)

  

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