×

ニュース

平和公園の禁煙検討へ 広島市 「全面」へ議論本格化

 広島市が、世界遺産・原爆ドームがある平和記念公園(中区)の全面禁煙化を検討することが5日、分かった。公園内は条例で喫煙制限区域に指定されているものの、市が設置する灰皿の周辺で喫煙できる。国内外から観光客や修学旅行生が訪れる祈りの場。喫煙の是非をめぐる議論が本格化する。(胡子洋)

 松井一実市長は5日、中国新聞のインタビューで「受動喫煙の機会を少なくするのは普通の流れだ。公園内の全面禁煙を視野に、市民の理解が得られるか議論したい」と述べた。禁煙化の目標時期には言及しなかった。

 市は本年度、「ごみのないまちづくりアクションプラン」をまとめる。その中で平和記念公園の禁煙化のほか、喫煙制限区域にある市設置の全灰皿の存廃も検討する。

 市は2003年、ぽい捨て等防止条例を施行し、平和記念公園を含む市中心部の約3・1平方キロを喫煙制限区域に設定。灰皿がない場所での路上、歩行喫煙や吸い殻の投げ捨てを禁じ、違反者から千円の過料を徴収する。

 市は制限区域内にある市設置の灰皿を住民の要望に応じて徐々に撤去しているが、現在126基ある。公園内にはベンチのそばなどに20基。公園内に灰皿を設ける理由を市緑政課は「観光客への配慮」と説明する。

 市はこれまで、公園内を禁煙化する社会実験や来園者へのアンケートなどに取り組んできた。09年度から毎年度続けるアンケートで禁煙支持は6割強を占める。同じ被爆地である長崎市の平和公園では、09年10月から全面禁煙化している。

 この日、公園内の灰皿近くでたばこを吸っていた中区の男性会社員(64)は「ルールは守っている。広い公園で誰か迷惑するだろうか」と強調した。

 一方、原爆慰霊碑の前で手を合わせていた横浜市の伊沢巨万夫(こまお)さん(76)は「犠牲者に祈りをささげる場。たばこは我慢するべきだ」と指摘。喫煙者の広島市西区の伊藤宜之さん(66)は「外国人観光客も多く、喫煙する姿は恥ずかしい。全面禁煙は当然」と話していた。

(2012年4月6日朝刊掲載)

年別アーカイブ