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福島の農家 葛藤を記録 「大地を受け継ぐ」広島で14日まで 

原発事故で汚染 苦悩と憤り

 映画「大地を受け継ぐ」は、東京電力福島第1原発事故で父を自死に追い込まれ、土地を汚染された福島県の農業樽川和也さん(40)の葛藤に迫るドキュメンタリーだ。井上淳一監督=写真=は、福島のことを忘れまいとの願いを込め「一人でも多くの心に『ひっかき傷』ができれば」と語る。

 原発から約65キロの須賀川市に住む樽川さん。田畑を放射能で汚染され、野菜が出荷停止になった翌朝、父は「おまえに農業を勧めたのは間違っていた」と言い残して自殺した。樽川さんは、受け継いだ土地を捨てるわけにはいかないと、今も作物を育て続けている。

 本作は2015年5月、自宅を訪れた東京の学生11人に樽川さんが震災後4年間の出来事を語るさまを撮影した。汚染された土地で育てた作物を出荷する罪悪感、除染や補償など東電や国の事故対応への憤り、周囲とのあつれき…。さまざまな感情を込めた率直な語りに、心揺さぶられる学生の表情が印象的だ。

 井上監督は「世の中のことをスマートフォンで分かった気になっていた学生が、生の声に触れて劇的に変わった。作品を見て、その追体験をしてもらいたい」と話す。

 広島市西区の横川シネマで14日まで公開中。(余村泰樹)

(2016年6月4日朝刊掲載)

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