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社説・コラム

社説 沖縄県議選 変わらぬ民意に応えよ

 変わらぬ民意があらためて示されたといえよう。沖縄県議選で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する翁長雄志(おなが・たけし)知事を支持する与党勢力が過半数を維持した。2014年12月に就任し、国との対決姿勢を鮮明にする翁長知事にとっては「中間評価」で信任を得た格好になろう。

 定数48のうち、知事の支持派は改選前の24議席から、27議席へと増えた。移設に明確に反対する勢力も31議席と多数を占めた。移設阻止に向けて知事権限を最大限に利用するため、県議会で後ろ盾を得た意義は大きいといえる。

 政府は、参院選を占うとともに知事の足元を揺さぶる重要な選挙と位置づけていたが、知事支持派を過半数割れに追い込むことはできなかった。

 今回の選挙では辺野古移設にとどまらず、沖縄に過重な負担を強いる米軍基地全体の在り方が問われた。先月、軍属の男が逮捕された女性遺棄事件に加えて投票日前日の深夜にも米兵が酒酔い運転事故を起こし、逮捕された。県民の憤りが高まる中での選挙戦となった。

 県議選と参院選を前に、基地への反発を抑えたかったのかもしれないが、政府が矢継ぎ早に打ち出した対応策が空回りに終わった感が否めない。

 投開票が迫る今月3日に公表した犯罪防止対策は、パトロールの強化や防犯カメラの増設などが柱だった。米軍関係の犯罪を抑止できるという説得力を欠いており、多くの沖縄県民にとっては小手先の対応という印象に映ったに違いない。

 沖縄が強く改定を求める日米地位協定を巡る日米両政府の新たな合意も生ぬるい。「軍属」の範囲の明確化に向け協議をスタートさせる。ただ、特権的な法的地位を保護する対象者を絞り込むのが狙いで、運用の一部見直しという対応で済ませる構えだ。再発防止に向けて十分と地元が受け止めたはずはない。

 繰り返される基地関係の事件・事故への怒りが県議選に影響したのは間違いない。日本政府はその重みを誠実に受け止めるべきであろう。このままでは、沖縄との溝を埋めるのは難しいのではないか。

 辺野古移設の問題についても同じである。訴訟にまで至った政府と沖縄県はこの3月にいったん裁判所による和解案を受け入れた。一時的に工事を中断して協議を続けている。

 県議選の結果に、翁長知事は「1年半の県政に理解をいただいた」と勝利宣言した。政府との対決姿勢を強める構えで、残る協議は平行線が予想される。

 沖縄の民意をどう受け止めるか。政府の姿勢がまたしても問われよう。菅義偉官房長官が選挙の結果にかかわらず、辺野古移設を進める考えを強調したことには首をひねる。

 県議選で、自民党の沖縄県連も地位協定の抜本改定を求める声を上げた意味は重い。党の枠を超えた民意が、思い切った基地の整理縮小に踏み込めない政権の責任を問うてもいよう。

 当の安倍晋三首相は「基地負担の軽減は国も県も同じ思いで違いはない」と述べた。口ばかりでは困る。沖縄に寄り添うなら地位協定の抜本見直しこそ急ぐべきだ。辺野古問題で県とまともに交渉したいなら、最低限の誠意を見せるべきだ。

(2016年6月7日朝刊掲載)

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