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山口県光市イメージ 室積さん新刊 Uターン元広告マンの「埋蔵金発掘課長」

 山口県光市在住の作家・俳優、室積光さん(61)の小説「埋蔵金発掘課長」(小学館、税別730円)が7日、文庫本で出版される。同市をイメージして執筆した初めての作品で、早期退職してUターンした元広告マンが財政破綻目前の市のために埋蔵金発掘に乗り出す物語。荒唐無稽ともいえる設定の中に、古里と戦争を巡るメッセージが込められている。(山中和久)

 2013年1月~14年3月に月刊文芸誌上で連載した作品を大幅加筆し、文庫化した。美しい海岸線を誇る山口県日照(ひてり)市が舞台。財政難解消のため市長の特命で始まった埋蔵金探しは、やがて海軍工廠(こうしょう)の地下に眠るお宝にたどり着く。登場する人物や地名などは光市に実在する人や場所を連想させる。

 「執筆の基本姿勢は『笑って泣いて考える』。まず面白くなくては」と語る。エンターテインメント性あふれる作品に貫かれているのは古里の再発見であり、戦争で死んでいった若者への思い、叔父を南方戦線で亡くした経験から表現者として誓う「不戦」だ。

 連載は、映画会社の演出担当者から寄せられたアイデアを基に書き始めた。「書いているうち自分も古里に帰りたくなった」と14年10月、生活の拠点を東京から、高校卒業まで暮らした光市に移した。

 6日は市役所に市川熙市長を訪ね、新刊を贈った。映画化を想定し、日照市長は俳優西田敏行さんをモデルに書いたと聞き、市川市長は「光を思う気持ちが表現されている。早く映画化されてほしい」と期待していた。

 室積さんは漫画化、ドラマ化された「都立水商!」で01年に作家デビュー。「史上最強の内閣」シリーズはロングセラーとなっている。

(2016年6月7日朝刊掲載)

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