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民泊旅行生に被爆講話 北広島・安芸太田の組織が「集い」 証言決意のきっかけも 広島

 民泊を活用して修学旅行を受け入れている北広島、安芸太田各町の官民組織が、旅行生に町内の被爆者の体験を聞いてもらう集いの開催に力を入れている。これまで語ることのなかった被爆者が証言を決意するきっかけにもなっている。(畑山尚史)

 両町の各組織は今月2日、神奈川県の中学校の修学旅行生約240人を共同で受け入れた。クラスごとに集いを開き、北広島町で3人、安芸太田町で4人の被爆者が語った。

 北広島町の会場では、同町荒神原の山崎勸さん(81)が爆心地近くで父を失い、遺体も見つけられなかった話をした。「母は1人で4人の子どもを抱えることになった。戦争で泣くのは女性や子どもたちだ」と訴えた。

 北広島町側は2015年度に集いの提案を始め、これまでに延べ3校が参加。安芸太田町側では13年度から取り組み、5校が体験を聞いた。北広島町側の事務局の町商工観光課は「少人数の前ならと、初めて体験を話す人もいる」という。

 同町大朝の藤本美恵子さん(90)もその一人。家族にもほとんど話した経験がないという藤本さんは5月に初めて証言した。「地元で気心の知れた別の被爆者と一緒だったので引き受けた。生徒が熱心に聞いてくれてよかった」と振り返る。

 北広島町の被爆者の平均年齢は83・8歳(15年3月末)、安芸太田町は85・0歳(16年3月末)。いずれも同時期の広島市の平均を4歳程度上回る。安芸太田町側の事務局の町観光協会は「被爆者の高齢化が進み、残された時間は少ない」と積極的に学校に働き掛けている。

 県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(74)=北広島町=は「被爆者が広島市の周辺部に多く暮らしていることを知ってもらうきっかけにもなる」と取り組みを歓迎している。

(2016年6月14日朝刊掲載)

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