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援護に尽力 回想録翻訳 韓国原爆被害者協会元会長・郭貴勲さん著 広島・井下さん出版 図書館へ寄贈

 韓国原爆被害者協会の会長を長年務め、海外に住む被爆者(在外被爆者)への日本政府の援護実現に尽くした郭貴勲(カク・キフン)さん(91)=京畿道=の回想録の日本語版を広島市の支援者が出版した。邦題は「被爆者はどこにいても被爆者」。在韓被爆者の歴史や日本の市民の支援を知ってもらおうと、各都道府県の図書館などに寄贈した。(水川恭輔)

 回想録は郭さんが2013年、韓国で「私は韓国人被爆者だ」と題して出版。在韓被爆者の支援を続け、郭さんと30年以上交流を続ける井下春子さん(84)=南区=が翻訳し、有志の委員会で自費出版した。

 郭さんは、日本が植民地支配した朝鮮半島から徴兵され、爆心地から約2キロの工兵隊兵舎前(現中区白島北町)で被爆。帰国後、67年に同協会を創設し、在外被爆者の支援を日本の司法に訴え続けた。2002年には大阪高裁で、日本から出国しても健康管理手当を支給すべきだという判決を勝ち取り、翌年からの実施につなげた。

 「韓日両国の徹底した責任のがれの中で、捨てられた被爆者はあちこちで呻吟(しんぎん)して死んでいった」…。回想録は援護の外に置かれた不当さへの憤りをつづる。一方、在韓被爆者の実態の発信や訴訟を支えた日本の市民たちへの感謝の気持ちを記す。徴兵時の「軍隊手帳」など、貴重な資料の写真も載せている。

 井下さんは「一人の韓国人被爆者がどう生きてきたかを通して日韓の真の友好を考える一助になれば」と願う。A5判、277ページ。300部印刷。希望者にも提供する。井下さんTel082(251)0805。

(2016年6月14日朝刊掲載)

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