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戦艦大和の謎に迫る 呉市潜水調査リポート <下> 新たな資料

菊の紋章など定説検証へ

 無人潜水探査機のカメラが戦艦大和の艦首を捉えた。菊の紋章が船上のモニターにはっきりと映し出された。

 紋章は旧日本海軍の戦艦や空母などの大型艦にしか取り付けられず、船の規模によってサイズが決まっていた。しかし、最大級の大和の紋章については資料が残っていない。

 潜水艇で17年前に行った調査では、直径は1・5メートルと結論づけた。これに従い、呉市の大和ミュージアムにある10分の1模型の紋章は直径15センチだ。

 しかし今回、それを覆す可能性がある映像が撮影された。探査機のアームに持たせたものさしを近づけると、これまでの定説より明らかに小さい。詳細なサイズは、呉市が今後、レーダーの計測値や画像から割り出す。

 大和の建造は当時、海軍の極秘事項「軍機」だった。建造中は設計図が細かに分けられ、作業員が全容をつかめないようになっていた。設計図が終戦時に焼かれたこともあり、謎が多い。

 今回の調査では約50時間のデジタル映像と約7千枚の写真を撮影した。膨大な資料の解析を進めれば、大和の新たな姿が浮き上がってくるかもしれない。

 解析を注視するのは研究者や歴史家だけではない。プラモデル大手タミヤ(静岡市)の広報担当者は「数少ない資料を基に模型を設計している。新たな事実が分かることを期待する」という。

 呉市は、7月23日から、撮影した映像のダイジェストを「速報版」として大和ミュージアムで公開。9月をめどに解析結果を報告し、ミュージアムの展示も更新する。(今井裕希)

<戦艦大和潜水調査の概要>
 呉市は5月10~27日、長崎県五島市の男女群島の南176キロの東シナ海に民間の調査船「新日丸」(697トン)を派遣。無人潜水探査機を戦艦大和が沈む水深約350メートルに潜らせ、デジタル映像での撮影や、レーダーなどによる計測をした。

(2016年6月16日朝刊掲載)

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