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平和の心 音楽で後押し 広島のNPO法人 コンサートの企画や助成

中区で来月10日 市民とプロ共演

 広島市のNPO法人「音楽は平和を運ぶ」が、平和発信を目指すコンサートの企画や演奏会への助成で存在感を増している。2014年8月の設立から2周年を前に、市民とプロが演奏で心通わせるコンサートを7月10日、中区の広島文化学園HBGホールで開く。(余村泰樹)

 コンサートは2部構成。前半は気鋭の指揮者田中祐子を迎え、モーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」やベートーベンの「合唱幻想曲」を奏でる。後半は作曲家の佐藤真が自作の「蔵王」「大地讃頌」を指揮する。

 広島少年合唱隊や、エリザベト音楽大付属音楽園の合唱団「プエリ カンタンテス」の子どもたちを含め、地元の市民やプロ計250人が合唱とオーケストラを担う。小澤征爾と協演を重ねる東京オペラシンガーズのプロ声楽家たちの指導を5月から受け、演奏に磨きをかけている。

 同法人は昨夏も、世界的に活躍する指揮者の大野和士を迎え、ベートーベンの交響曲第9番「合唱」のコンサートを企画。広島交響楽団と国内外の首席奏者による特別編成のオケで届けた。助成では昨年度、ピアニストのマルタ・アルゲリッチと協演した広響の「平和の夕べ」コンサートなど約30件をサポートした。

 今回は、「人の心に平和のとりでを築くコンサート」と銘打つ企画の3回目となる。午後3時開演。2千円。同法人Tel082(247)8604。

松尾理事長に聞く

ヒロシマ復興 力もらった

 NPO法人「音楽は平和を運ぶ」の松尾康二理事長=写真=は、広島市出身の経済人(カルビー相談役)で被爆者でもある。活動の狙いや展望を聞いた。

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 広島の復興とクラシック音楽の結びつきは強い。8歳で被爆した私も翌年、広島高等学校(現広島大)の講堂でシューベルトの交響曲「未完成」を聴き、力をもらった。

 生き残った人が集まって演奏したのだろう。悲痛の中から高まっていくような曲調は、焼け跡から立ち上がる被爆者の姿と重なり、深い感動を覚えた。

 被爆から70年がたち、原爆の悲劇性よりも、平和は楽しいということを世界に訴えたい。その思いを一番共有しやすいのが音楽だ。

 プロによるレベルの高い演奏を聴く場や、優れた音楽家とステージに立つ感動を味わう機会をつくっていく。同じ趣旨のイベントは協賛や助成の形で支援する。活動をいっそう充実させ、広島を音楽の街にしたい。

(2016年6月18日朝刊掲載)

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