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抱擁「心通じうれしい」 広島の森さん オバマ氏訪問振り返る

 先月27日に広島を訪れたオバマ米大統領と対面した被爆者で、歴史研究家の森重昭さん(79)=広島市西区=が24日、東京都千代田区の日本記者クラブで記者会見した。被爆死した米兵捕虜の調査を続けてきた森さんは、平和記念公園(中区)でオバマ氏と抱擁した瞬間を「真心が通じたと感じ、うれしかった」と振り返った。

 森さんは国民学校3年生の時、爆心地から約2・5キロの現西区で被爆した。会見では、遺体を踏み越えながら逃げた「あの日」を証言。原爆被害に関する調査を始めた動機を「原爆は簡単な言葉で表せるものじゃない、との思いからだ」と語った。

 被爆死した米兵捕虜の存在を知ってからは会社勤めの傍ら調査に没頭。捕虜の供養と遺族の掘り起こしを続けてきた。手掛かりが少なく「太平洋で独り、釣りをしているような気持ちだった」。平和記念公園での訪問行事に招かれたことに「やってきたことが正しかったと認めてもらえた。遺族や関係者が私を信用してくれたおかげだ」と涙ながらに語った。

 オバマ氏の演説は最前列で見守った。「この人は本気だ、と感じた」と評価。「生きている間は使命感を抱き、世界の平和にいろいろな形で貢献されるのではないか」と期待を寄せた。

 会見後、森さんと遺族の交流を追った米国の映画監督が自主製作したドキュメンタリー作品も上映された。(田中美千子)

(2016年6月25日朝刊掲載)

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