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戦争が翻弄 家族の絆 「子供たちの涙」 広島できょうから上映 オランダから捜す日本人の父

 第2次世界大戦中のインドネシアで、日本人の軍人・軍属と、インドネシア系オランダ人との間に生まれた子どもたちがいた。砂田有紀監督のドキュメンタリー映画「子供たちの涙」は、戦後、日本社会からほとんど関心を寄せられることのなかったその存在に光を当てている。

 映画には、今はオランダに暮らす男女3人が登場する。日本の敗戦で父が去った後、母に連れられてオランダに渡った「戦争の落とし子たち」(砂田監督)だ。大戦時の「敵国の子」としてオランダ社会で憎しみや差別にさらされながら生き抜き、今、70代になっている。

 その一人、ニッピ・ノヤさんは国際的に活躍するパーカッション奏者。子どもの頃はいつも、のけ者にされ、一時はストリートギャングになって刑務所も経験したという。父を「最愛の人」と語った母の言葉を信じきれないまま、その面影を追い続けた人生が描かれる。

 彼らの父捜しを懸命に助ける日本人の姿も交え、戦争に翻弄(ほんろう)された家族の傷痕を映し出す。ニッピさんは父の消息が判明し、日本在住の親族と出会えたが、親族に墓参すら断られるケースもある。

 砂田監督は英ロンドン大大学院でドキュメンタリー制作を学び、日英の元兵士の和解を描いた映画「兵隊だったおじいちゃんへ」を撮る中で、このテーマに巡り合った。「荷が重過ぎて、何度も途中で投げ出そうと思った」というが、「すっと私を受け入れてくれた」ニッピさんらの人柄に励まされ、完成にこぎ着けた。

 「人間不信になって当然の人たちが、苦しみを乗り越え、強さや豊かさに達している。それを伝えたいと思った」。ナレーションのない、淡々と静かな作風の49分。2015年度の日本映画復興奨励賞を受賞した。「戦争反対を訴えるのに、こんなやり方もあっていい」と手応えを語る。

 1~7日の午後1時50分から、広島市西区の横川シネマで上映。「兵隊だったおじいちゃんへ」(28分)も併映する。2、3日は上映後、砂田監督を交えたトークショーや舞台あいさつがある。(道面雅量)

(2016年7月1日朝刊掲載)

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