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社説・コラム

争点を語る2016参院選 平和ボランティアガイド・村上正晃さん=広島市西区

核廃絶への行動に注目

 オバマ米大統領の5月の広島初訪問は確かに歴史的で、核兵器廃絶への意欲を語った。しかし任期は残りわずか。オバマ氏一人で解決できる話でもなく、大統領が代われば今後は分からない。ここからがスタート。一人一人が人ごとではなく、核や被爆の実態を知り、自分の問題として考える必要がある。

 その広島訪問時の写真が、自民党の参院選公約集で日米同盟の象徴のように使われているのには違和感を抱く。核兵器をなくす努力をしている国がある中で、日米はしていない。2015年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で核軍縮への道筋を示す最終文書が採択できなかったのも、その一例だ。被爆国日本はリーダーシップを発揮するどころか米国の核の傘に入っている。オバマ氏訪問を受け、その先の外交、平和行政に注目している。

  ≪尾道市出身。広島修道大在学中、被爆者と知り合い、14年春以降、ボランティアガイドとして原爆ドーム(広島市中区)前に立つ。卒業後もアルバイト生活を送りながら続ける。原爆に関する資料を手に国内外からの観光客に伝える。≫
 「核の抑止力」を信じている人が若者を中心に多いと感じる。ヒロシマの実態を知らずにそう考えているように思える。自分も広島県内に生まれながら学ぶ機会はほとんどなく、無関心で無知だった。広く事実を知れば核は絶対悪で、抑止力の発想は生まれない。

 ただガイドでは自分から「核廃絶」への願いを押しつけない。この地に原爆が投下され、街や人の営み、命が消え、その後の核実験でも世界中にヒバクシャが生まれた現状を伝えることで、おのずと答えが出ると信じている。

  ≪被爆者の平均年齢は80歳を超える。被爆体験や事実が継承されなければ抑止力の論調が前面に出てくると危機感を持つ。今年3月に集団的自衛権行使を容認する安全保障関連法が施行。「議論は全く深まっていない」と指摘する。≫
 安保法は国の方向を左右する。日本は大きな転換期を迎えているのに、どうも国の進むべき道を選んでいる実感がない。権力があえてそんな空気をつくり出しているように感じる。ヒロシマの発信力は被爆者の老いとともに弱ってきている。今こそ一人一人が国の明日を選ばないといけない。(聞き手は胡子洋)

(2016年7月2日朝刊掲載)

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