×

社説・コラム

天風録 「憲法色」

 カタカナ語の氾濫は色の世界でも変わらない。ともすると茶色よりブラウン、灰色よりグレーの方が通りがいい。東京新橋の芸者衆が好んだ青で新橋色―。日本語の方が何か、匂い立つような味わいが伝わる▲「憲法色(けんぽういろ)」というのがある。明治憲法や日本国憲法とは縁もゆかりもない。黒っぽく茶味のある、その色を室町時代に染め出した武芸者の名にちなむらしい。普段着で愛されたというから、その点も憲法と開きがある▲さて、参院選の旗色である。護憲色か、はたまた改憲色が濃くなるのか。選挙公報にはちらほら、それらしき言葉が見えるものの、与野党の論戦は、さっぱりかみ合ってこない▲懸念が当たったといえよう。育児の月刊誌「母の友」が最新号で憲法特集を組んでいる。水や空気と同じく、身近で子育てには欠かせないものとして光を当てた。護憲、改憲をめぐる戦後史もひもとく。知るのが先との姿勢に立場の違いはあるまい▲漫画週刊誌「ビッグコミックスピリッツ」も週明けの号で、憲法全文を付録にする。若い読者向けの保存版と銘打つ。伸び盛りにあやかって、縁起いいのは「若竹色」。やや古色蒼然(そうぜん)のきらいもある憲法論争に活が入るか。

(2016年7月3日朝刊掲載)

年別アーカイブ