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2016参院選やまぐち 基地交付金で事業続々 シロヘビの館/消防防災センター… 維持で将来の負担増も

 岩国市横山の吉香公園内に3月24日、「岩国シロヘビの館」がオープンした。国の天然記念物「岩国のシロヘビ」を紹介する観光・学習施設。それまでの観覧所を一新して生態や歴史に迫る工夫を施し、集客にも期待が高まる。

 総事業費約2億3600万円のうち9割に米軍再編交付金を充てた。竣工(しゅんこう)式のあいさつで市議会の桑原敏幸議長は、「(交付金が使われていることを)頭に入れとってください」と基地のまちのメリットを強調した。

 米海兵隊岩国基地を抱える市にとって、在日米軍再編に伴う米軍再編交付金や防衛省の各種補助金・交付金は主要な財源の一つだ。3月に運用を始めた愛宕町の「いわくに消防防災センター」は、総事業費約50億円の75%を同省の補助金で賄った。2019年度からの供用開始を予定する日の出町のごみ焼却施設建設事業(建設費約188億円)にも同率の補助金を活用する。

措置 21年度まで

 こうした大規模事業の進展を背景に、市の16年度一般会計当初予算は合併以降最大の731億9千万円に上った。このうち基地関係の補助金と交付金は71億2300万円と歳入全体の約1割を占める。人口約14万人規模のまちで、億単位の主要事業を複数同時に進められるのは基地あるが故といえる。

 中でも、08年度から交付されている再編交付金は原則補助率が100%で対象事業が幅広く、「使い勝手がいい」と市幹部。市はこれまで、医療費助成などの子育て支援や基地周辺のまちづくり事業などに充ててきた。

 ただ、再編交付金を定めた特別措置法によると交付期限は現時点で21年度まで。福田良彦市長は「国として行うべき当然の措置」として期限延長を国に求めているが、現在と同様の交付が続くかどうかは不透明で、代わる財源の保証もない。

サービス拡充を

 2歳の娘がいる同市南岩国町の主婦横田葉月さん(37)は「常に危険と隣り合う基地のまち。支援が途切れるようなことがあっては困るし、市民サービスをもっと拡充してほしい」と求める。

 一方、「ハコモノ」の維持管理や運営費は基本的に市の負担だ。旧市内各地にある「供用会館」など、老朽化し改修が必要な施設も多い。将来的に基地関係の補助金だけでは賄えず、市の負担が増える可能性もある。

 在日米軍再編で、岩国基地には17年ごろまでに米海軍厚木基地(神奈川県)から空母艦載機59機が移転する予定だ。騒音や事故、軍関係者による事件など、市民がさらされるであろうリスクは、単純に補助金と引き換えにはできない。

 艦載機移転に反対する「愛宕山を守る市民連絡協議会」の岡村寛世話人代表(72)は「基地で国からお金を引き出すやり方は、未来永劫(えいごう)続けられない。国にノーと言えず、新たな負担を受け入れるしかなくなる」と懸念している。(野田華奈子)

(2016年7月3日朝刊掲載)

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