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社説・コラム

天風録 「親子で投票」

 きのうの投票所。よちよち歩きの男の子が、父親の投票用紙が吸い込まれた投票箱の穴を、「これなあに」と見つめていた。あまり知られなかったようだが、今回は「子連れ投票」が全面的にOKとなった初の国政選挙▲今までは「やむを得ない事情」がない限り認められていなかった。選管ごとに柔軟に対応していたものの、子どもを投票所の外で待たせるよう告げられるケースもあったという。静かさや秩序を保つためだったらしい▲18歳選挙権と併せて法改正されたのは、主権者教育の意味もあったのだろう。3人の子を連れて投票した母親はそれは知らなかったと笑いながら「選挙には行くものと小さい頃から伝えたくて」と。親の背を見て子は育つ―。きっとそうに違いない▲それには、まだ時間がかかりそう。参院選の投票率は過去4番目の低さだった。棄権した半分近くの有権者は、改憲勢力が3分の2を超えた結果をどう受け止めたのだろう。憲法改正が現実味を増した、といえないか▲国のかたちを問い直すのなら、私たちの民主主義をもっと分厚く、もっと急いで育てなければ。選挙にとどまらず、日々親子で政治を語り合うことはできないものか。

(2016年7月11日朝刊掲載)

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