×

ニュース

原爆ドーム保存をめぐる番組 43年ぶりに復元

■記者 北村浩司

 原爆ドームの保存をめぐる議論が起きていた1965年8月6日にNHKが放映したドキュメンタリー「現代の映像『原爆ドームの20年』」を、NHKアーカイブス(埼玉県川口市)が43年ぶりに復元した。当時のプロデューサーが台本を保管していたことが、番組復活の決め手になった。

 番組は、被爆から20年経過した広島の街や被爆者の暮らしを写しながら、保存か解体かの議論に対する、被爆者の複雑な思いをつづった。「残っていること自体が残酷だ」と保存に強い拒否を示す声や、「なくなると何もかもが忘れられていくかもしれない」と訴える意見などが語られる。翌66年、保存が決まり、全国からの募金などで保存工事が実施された。

 原爆小頭症患者と家族でつくる「きのこ会」の結成総会や、広島大の研究者らが保存の可能性を調べる様子などの貴重な映像も収録されている。

 東京都江東区の都立第五福竜丸展示館が、「原爆ドームと第五福竜丸展」(12月21日まで)を準備する中で存在を知り、NHKに問い合わせた。映像は残っていたが、生放送で声をかぶせる構成だったため、音声は残っていなかった。

 しかし、当時、番組を手掛けた元NHKプロデューサーの宮原敏光さん(77)が自宅に台本を保存していることが判明。当時もナレーションを担当した梶原四郎元アナウンサーが再度、録音に参加するなどして番組がよみがえった。11日、同展示館であった上映会で見た宮原さんの長男の裕司さん(52)は「入院中の父親にもぜひ見せたい」と喜んでいた。

 アーカイブスの永田浩三エグゼクティブディレクターは「議論を乗り越えて当時の関係者が保存を決断したことの意義深さを再認識した。近くアーカイブスで公開するが、広島の皆さんにも見てもらう機会ができれば」と話していた。

(2008年10月16日朝刊掲載)

関連記事
「原爆ドームと第五福竜丸 市民が守った平和遺産」展 (08年10月16日)

年別アーカイブ