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動員学徒にささぐ鎮魂歌 観音高卒業生 東京で上演 母校の悲劇 9楽章に

 原爆で犠牲となった広島二中(現観音高)1年生の動員学徒を悼む合唱曲「レクイエム碑(いしぶみ)」が、東京都内で上演された。都内や近郊に住む観音高の卒業生が初めて企画。観客からは「また聴きたい」との声が寄せられ、メンバーは早くも再演へ意欲を燃やしている。

 曲は約40分の大作。「全滅」「まさちゃんお母さんよ」など9楽章で構成し、323人の若い命を奪った原爆の悲惨さを表す。今回は50代の卒業生とその家族たち男女16人で熱唱。楽章の合間には、同じく観音高出身で俳優の蒔村三枝子さん(62)が、歌詞の基になった広島テレビ編さんの記録集「いしぶみ」を朗読した。約200席を埋めた観客からはすすり泣きも漏れた。

 卒業生は在学中、音楽部で合唱に親しんでいたメンバーばかり。旗振り役となった作曲家の高嶋(本名安井)圭子さん(53)=荒川区=は2012年、広島の元部員たち約50人による「観音高音楽部OB合唱団」が東京で初めて公演した際、刺激を受けたという。再演の見通しが立たない中、東京の元部員に「自分たちで上演しよう」と呼び掛け、昨秋から猛練習してきた。

 「被爆地に比べ、東京の人は原爆への関心が低いと感じる。歌を通じ、母校の悲劇を伝えたかった」と高嶋さん。次世代への継承を意識し、長女ゆりさん(19)たち早稲田大の合唱サークルの学生3人にも加わってもらった。観客のアンケートでは「惨状が目に浮かんだ」「平和の意味を考えさせられた」との声も。メンバーは「広島を離れた地でこそ歌い継ごう」と、来夏の再演を考え始めた。

 広島市では8月7日午後2時、OB合唱団が東区民文化センターで歌う。大人900円、中学生以下500円。(田中美千子)

(2016年7月18日朝刊掲載)

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