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連載・特集

緑地帯 飯舘村の母ちゃんたち 古居みずえ <8>

 福島県飯舘村の避難指示は、2017年3月末までに一部地域を除いて解除される。しかし、仮設住宅などに避難している住民は、指示が解除されても戻る場所がない人も多く、途方に暮れている。11年春から追いかけてきた飯舘村の母ちゃんたちは、今後どういう決断をしていくのだろうか。

 取材してきた人たちに尋ねると、高齢の両親のことを考えて村に帰るつもりでいる人、放射線量が高いため帰りたくても安心して帰れないと思っている人、どうすべきか揺れ動いている人…。さまざまだ。

 映画で追った菅野栄子さんは、14年の自宅の除染で長年使っていた家具を捨てた時、何とも言えないむなしい気持ちに襲われたという。思い出まですべて捨ててしまったようで、吐き気が止まらなかった。同居していた家族もいないこの場所に、もう1人では住めないとも思ったそうだ。

 避難指示が解除されても、飯舘村の地面を剝ぎ取って出る土は、フレコンバッグに入れられ、村内の仮置き場に山積みになる一方だ。その数は既に160万個以上。そんな所に人は住めるのだろうか? 帰村の1年後には学校もできるというが、子どもたちが果たして帰って来ることができるのだろうか?

 これは、飯舘だけの問題ではない。原発大国の日本ではどこででも起こり得ることだ。栄子さんは映画の上映会のトークでこう訴えていた。「自分の問題として捉えてほしい。福島だけの問題にして、忘れないでほしい」(ジャーナリスト=東京都)=おわり

(2016年7月13日朝刊掲載)

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