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ヒロシマ伝える衣服片 陸自衛生学校収蔵

 旧陸軍の調査団が原爆投下直後の広島から持ち帰ったとみられる被爆者の衣服の一部を、陸上自衛隊衛生学校(東京都世田谷区)が収蔵していることが30日、分かった。熱線で白い布に施された黒い模様の部分だけが焼き抜かれている。原爆の熱線被害をはっきりとどめた衣服は原爆資料館(広島市中区)にも数点しかなく、同館は「貴重な資料」としている。

 衣服の一部である布は、同校医学情報史料室「彰古館」で見つかった。縦約18センチ、横約15センチで、等間隔に配された1辺約2センチの黒のひし形模様だけ焼けてなくなっている。

 布には「陸軍」と印刷された、ただし書きの紙1枚が添えてある。墨字で「本衣服ヲ着用セル傷者ハ下ニ白色ノ下着ヲ着用シアリタル為(ため)カスリ縞(しま)ノ部分ノ皮膚ハ火傷ヲ蒙(こうむ)ルコトヲ免レタリ」と記されている。服の持ち主の名前や被爆した場所などの記述はない。

 旧陸軍は原爆投下2日後の1945年8月8日、広島に調査団を派遣。同年11月、被爆者の血液検査や遺体の病理解剖の結果を報告書「原子爆弾ニ依(よ)ル広島戦災医学的調査報告」にまとめた。彰古館は報告書の現物と、連合国軍総司令部(GHQ)に提出したとされる英訳版を1冊ずつ所蔵する。

 布は2010年3月に彰古館を学内移転した際、同館学芸員が報告書の関連資料の中から見つけた。変色が進んでいたため、防衛省は保存のための補修をした。原爆資料館学芸課は「原爆の熱線のすさまじさを物語る資料。永久保存してほしい」としている。(田中美千子)

(2012年5月1日朝刊掲載)

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