米学生 作者に取材 戦後描いた児童画 被爆後の生活や思い聞く
16年7月25日
戦後間もない１９５３年３月、被爆地広島の小学生が描き、米ニューメキシコ州サンタフェ市に贈られた絵が来年、約６０年ぶりに米国で一般公開されるのを前に、会場となる米メーン州のボウディン大の３年生、天野マイケルさん（２１）が広島市を訪れ、絵の作者や小学生の取材に取り組んでいる。（二井理江）
天野さんは７月初旬に来日。来年２～５月、同大美術館で展示予定の４４点が描かれた当時の子どもたちの生活ぶりや、ヒロシマへの思い、来館者へのメッセージなどについて、連絡が取れた作者３人にインタビューして動画を収録した。
■「緑多い世界に」
当時、舟入小（中区）５年で山や小屋などの風景画を描いた林喜代司さん（７４）＝廿日市市＝は「絵は覚えていないが、風景画を描くのが好きだった」とコメント。「緑や自然が好き。戦争や紛争の地には緑がない。平和で緑が多い世界になってほしい」と述べた。
本川小（同）１年だった胎内被爆者の高見正治さん（７０）＝西区＝は、２カ月前に自身の作品と知った学芸会の絵のコピーを縮小して職場の机に貼っているエピソードを披露。外国人に伝えるヒロシマについて「悲惨なことを伝えるより、忘れてほしい」と語る。
神崎小（同）６年だった寺川泰子さん（７６）＝中区＝は、当時の食糧事情について「食べ盛りの子ども４人を抱えて母は大変だった。給食はコッペパンや短いうどんなどで、残したことはなかった」と振り返った。自身は被爆していないが、横顔の写真を見た鹿児島の人に「顔の反対側にやけどの痕があるんじゃないか、と言われショックだった」と話した。来館者へは、平和な世界を願うという。
■小学生とも交流
小学生への取材は舟入小６年の１５人が協力。「広島に住んでいるのが好きか」の問いには、全員が「はい」。「被爆建物を直接見て、原爆の恐ろしさを学べる」「原爆の恐ろしさを知っていて、そこから平和の大切さを世界に広められる」など理由を話した。オバマ米大統領の広島訪問については「米国でニュースになって、見た人がヒロシマについて調べたり考えたりしてくれたらうれしい」「核兵器のない世界の訴えが世界に広がると思った」などと感想を話していた。
日系３世で祖母が広島出身の天野さんは、大伯父家族が被爆死し、原爆に反対の意を表した。それを踏まえ、早瀬京佑君（１２）は「僕も原爆反対。米国人の天野さんも反対でいてくれた。僕たちの考えを米国で伝えてほしい」と願っていた。
取材した内容は、作品とともに展示する予定。動画も編集して紹介する。８月上旬まで広島に滞在予定の天野さんは「興味深い話が多く、来館者も関心を持ってくれるはず。広島にいる間にもっと聞きたい」と話している。
当時の報道では、広島市側から１２０点余り、サンタフェ市側から１０８点を交換。広島の子どもたちの絵はニューメキシコ州内で展示され、見た人たちに感銘を与えた、としている。
絵は、江波小（同）や広瀬小（同）、比治山小（南区）など１６小学校の児童が出品。小学校名や学年、名前はローマ字で記されている。同センターＴｅｌ０８２（２３６）２８０１（平日午前１０時～午後６時）。
（２０１６年７月２５日朝刊掲載）
１９５３（昭和２８）年３月に広島市から米ニューメキシコ州サンタフェ市に送られた小学生の絵の学校名、学年、作者名は以下の通り。（敬称略、学校名はあいうえお順、作者が判明した作品は名前を漢字表記し、かっこ内は現在の姓）
宇品小、６年、マツハラ・チサト
江波小、１年、シノザキ・スケタロウ
江波小、３年、ハヤシ・ケイコ
江波小、５年、ササキ・カツユキ
江波小、５年、スエヒロ・ミツオ
大芝小、５年、イワイ・マサタカ
大芝小、６年、タマガワ・スズコ
神崎小、３年、小島敏嗣
神崎小、４年、大下洋成
神崎小、６年、下高（寺川）泰子
己斐小、３年、ヤマグチ・ヒロシ
己斐小、６年、小倉勝司（２点）
荒神町小、３年、イマダ・ヒデマル
千田小、２年、ジョウ・カツヒコ
千田小、５年、イシカワ・レイコ
仁保小、２年、オキ・ヤスコ
仁保小、５年、クリヤマ・ミノル
仁保小、５年、ハマ・タカミツ
白島小、４年、ヒロザネ・ショウジ
比治山小、３年、ウツミ・キョウコ
比治山小、５年、サトウ・フミコ
比治山小、５年、トヤマ・サイコ
比治山小、５年、ユゲ・セイスケ
広瀬小、３年、シロモト・シゲル
広瀬小、６年、カネコ・ヤヨイ
舟入小、１年、中山裕登
舟入小、１年、新居佳子
舟入小、１年、西原弘
舟入小、２年、杉崎勝朗
舟入小、３年、穴田幸子
舟入小、３年、熊谷克彦
舟入小、４年、新谷國昭
舟入小、５年、林喜代司
舟入小、６年、恵谷和之
古田小、３年、坪田和彦
本川小、１年、高見正治
本川小、２年、野間昇司
本川小、３年、柿田佳子
本川小、３年、スエダ・イクコ
本川小、３年、オガサワラ・エイコ
三篠小、４年、ヨシオカ・キヨミ
元宇品小、６年、キミカワ・アツコ
（不明）、３年、クボ・モスケ
天野さんは７月初旬に来日。来年２～５月、同大美術館で展示予定の４４点が描かれた当時の子どもたちの生活ぶりや、ヒロシマへの思い、来館者へのメッセージなどについて、連絡が取れた作者３人にインタビューして動画を収録した。
■「緑多い世界に」
当時、舟入小（中区）５年で山や小屋などの風景画を描いた林喜代司さん（７４）＝廿日市市＝は「絵は覚えていないが、風景画を描くのが好きだった」とコメント。「緑や自然が好き。戦争や紛争の地には緑がない。平和で緑が多い世界になってほしい」と述べた。
本川小（同）１年だった胎内被爆者の高見正治さん（７０）＝西区＝は、２カ月前に自身の作品と知った学芸会の絵のコピーを縮小して職場の机に貼っているエピソードを披露。外国人に伝えるヒロシマについて「悲惨なことを伝えるより、忘れてほしい」と語る。
神崎小（同）６年だった寺川泰子さん（７６）＝中区＝は、当時の食糧事情について「食べ盛りの子ども４人を抱えて母は大変だった。給食はコッペパンや短いうどんなどで、残したことはなかった」と振り返った。自身は被爆していないが、横顔の写真を見た鹿児島の人に「顔の反対側にやけどの痕があるんじゃないか、と言われショックだった」と話した。来館者へは、平和な世界を願うという。
■小学生とも交流
小学生への取材は舟入小６年の１５人が協力。「広島に住んでいるのが好きか」の問いには、全員が「はい」。「被爆建物を直接見て、原爆の恐ろしさを学べる」「原爆の恐ろしさを知っていて、そこから平和の大切さを世界に広められる」など理由を話した。オバマ米大統領の広島訪問については「米国でニュースになって、見た人がヒロシマについて調べたり考えたりしてくれたらうれしい」「核兵器のない世界の訴えが世界に広がると思った」などと感想を話していた。
日系３世で祖母が広島出身の天野さんは、大伯父家族が被爆死し、原爆に反対の意を表した。それを踏まえ、早瀬京佑君（１２）は「僕も原爆反対。米国人の天野さんも反対でいてくれた。僕たちの考えを米国で伝えてほしい」と願っていた。
取材した内容は、作品とともに展示する予定。動画も編集して紹介する。８月上旬まで広島に滞在予定の天野さんは「興味深い話が多く、来館者も関心を持ってくれるはず。広島にいる間にもっと聞きたい」と話している。
当時の報道では、広島市側から１２０点余り、サンタフェ市側から１０８点を交換。広島の子どもたちの絵はニューメキシコ州内で展示され、見た人たちに感銘を与えた、としている。
絵は、江波小（同）や広瀬小（同）、比治山小（南区）など１６小学校の児童が出品。小学校名や学年、名前はローマ字で記されている。同センターＴｅｌ０８２（２３６）２８０１（平日午前１０時～午後６時）。
（２０１６年７月２５日朝刊掲載）
１９５３（昭和２８）年３月に広島市から米ニューメキシコ州サンタフェ市に送られた小学生の絵の学校名、学年、作者名は以下の通り。（敬称略、学校名はあいうえお順、作者が判明した作品は名前を漢字表記し、かっこ内は現在の姓）
宇品小、６年、マツハラ・チサト
江波小、１年、シノザキ・スケタロウ
江波小、３年、ハヤシ・ケイコ
江波小、５年、ササキ・カツユキ
江波小、５年、スエヒロ・ミツオ
大芝小、５年、イワイ・マサタカ
大芝小、６年、タマガワ・スズコ
神崎小、３年、小島敏嗣
神崎小、４年、大下洋成
神崎小、６年、下高（寺川）泰子
己斐小、３年、ヤマグチ・ヒロシ
己斐小、６年、小倉勝司（２点）
荒神町小、３年、イマダ・ヒデマル
千田小、２年、ジョウ・カツヒコ
千田小、５年、イシカワ・レイコ
仁保小、２年、オキ・ヤスコ
仁保小、５年、クリヤマ・ミノル
仁保小、５年、ハマ・タカミツ
白島小、４年、ヒロザネ・ショウジ
比治山小、３年、ウツミ・キョウコ
比治山小、５年、サトウ・フミコ
比治山小、５年、トヤマ・サイコ
比治山小、５年、ユゲ・セイスケ
広瀬小、３年、シロモト・シゲル
広瀬小、６年、カネコ・ヤヨイ
舟入小、１年、中山裕登
舟入小、１年、新居佳子
舟入小、１年、西原弘
舟入小、２年、杉崎勝朗
舟入小、３年、穴田幸子
舟入小、３年、熊谷克彦
舟入小、４年、新谷國昭
舟入小、５年、林喜代司
舟入小、６年、恵谷和之
古田小、３年、坪田和彦
本川小、１年、高見正治
本川小、２年、野間昇司
本川小、３年、柿田佳子
本川小、３年、スエダ・イクコ
本川小、３年、オガサワラ・エイコ
三篠小、４年、ヨシオカ・キヨミ
元宇品小、６年、キミカワ・アツコ
（不明）、３年、クボ・モスケ
