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「原爆 人類全体への犯罪」 「非暴力平和隊」創設のダンカン氏 広島で講演 紛争地での活動を報告

 地域紛争の非暴力的解決を実践するために活動している国際的な非政府組織(NGO)「非暴力平和隊」(NP)創設者の一人、メル・ダンカン氏(66)=米ニューヨーク=が、広島市でNPの意義や活動の現状について講演した。自らの希望で初めて訪れたヒロシマについては「原爆投下は人類全体に対する犯罪だ。アイアムソーリ(ごめんなさい)」と述べた。

 NPは、暴力の影響を直接受けている場所に入って非武装の文民、特に女性を守る活動をしている。この非武装文民保護(UCP)活動は、非暴力▽不偏不党▽現地の人が主要な役割を果たす―を原則としている。

 具体的には、特別に訓練されたプロが人々を守る仕事をしている。日本を含め多くの国の人がいる。半数が女性で、国連平和維持活動(PKO)の女性の割合が4%程度とされるのに比べ大きな差がある-などが特徴という。

 UCPは、NPだけがやっているのではない。最新の調査によると、この25年間で37カ国、56の機関が活動しているという。あらゆる場合にも対応できるわけではない。それでも「国連でも非常に重要な活動だと認められている」と活動の重要性を強調した。

 ヒロシマについては、10歳の時、母が核戦争を恐れていた思い出から話し始め、「ここ広島で起こったことを世界は決して忘れてはならない」と訴えた。「私の国、米国が原爆を製造、投下した。何十万もの民間人が殺されたことへの正当な根拠は決して存在しない」と謝罪の意を明らかにした。

 さらに「米国が今、1兆㌦を費やし、核兵器の近代化を行っていることにも『ごめんなさい』と言いたい。世界中の飢える人々、病人、きちんとした教育を受けられない子どもらのためのお金が奪われている」と述べた。

 日本の憲法にも触れ、「9条は、国家が戦争を放棄し紛争を非暴力的に解決するための方針を明示している。全ての国々の模範として扱われるべきだ」との考えを示した。

 講演に先立つ取材では、オバマ米大統領のヒロシマ訪問について「現職の大統領では初めてで非常に意味がある。しかし謝罪しなかったことには失望した。米国でも多くの人は謝罪してほしかったと考えていると思う」と指摘。「もちろんロシアとの新たな戦略兵器削減条約(START)や、イランの核開発に歯止めをかけた条約など、良い活動もしてきた。しかし十分ではない。世界から核兵器を廃絶しないといけない」と話していた。

 ダンカン氏は「非暴力平和隊・日本」の招きで来日。東京と京都でも講演した。(宮﨑智三)

(2016年7月25日朝刊掲載)

ダンカン氏のヒロシマ関連の原稿はこちら

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