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裁判官視察どう影響 上関埋め立て 28日 漁場や自然環境確認 山口

 山口県上関町で原発建設を計画する中国電力に県が交付した公有水面埋め立て免許を取り消すよう計画反対派が求めた訴訟で、山口地裁は28日、建設予定地と同町祝島を視察する。約30年にわたる上関原発関連の訴訟を通じ、裁判官が現地を訪れるのは初めて。県が免許延長申請の可否判断を先送りしている埋め立ての舞台は司法の目にどう映るのか、注目が集まる。

 桑原直子裁判長たち裁判官3人が視察する。祝島では漁業者の説明を受け、対岸約4キロの予定地との距離を把握する。予定地は海と陸の両方から視察。争点の漁場や自然環境を確かめ、原告適格を見極める。

 中電や反対派によると、上関原発の構想浮上2年後の1984年ごろから、推進、反対双方が司法の判断を仰いできた。漁業補償や土地の入会権、工事妨害の禁止などを巡り、提訴と仮処分申請は20件に及ぶとみられる。福島第1原発事故後の準備工事中断を背景に和解も成立したが、今なお訴訟5件(うち1件は併合審理)が係争中だ。

 視察は埋め立て免許取り消し請求訴訟2件の進行協議の一環。原告側が要望した。原告の一人、上関原発を建てさせない祝島島民の会の山戸貞夫前代表は「祝島からの距離感、事故の際に避難しにくい集落の狭い道を実際に見てもらうのは意義がある」。被告の県港湾課は「地裁が決めた手続きに従い適切に対応したい」とする。

 県は免許を2008年10月に交付。中電からの延長申請について許可、不許可の判断を先送りしている。申請に関する7回目の補足説明を6月に受け取った村岡嗣政知事は、今回の視察について「(延長申請の)審査に関連するとは理解していない」と述べている。

 荒天時は8月4日に視察する。(井上龍太郎)

≪上関原発計画を巡る係争中の訴訟≫

①種類
②原告(提訴時)
③被告
④請求の主な内容
⑤提訴時期

①埋め立て免許取り消し請求
②反対派の祝島漁業者74人
③山口県
④県が中電に交付した公有水面埋め立て免許の取り消し
⑤2008年10月

①埋め立て免許取り消し請求
②スナメリなど生物6種と住民たち
③山口県
④県が中電に交付した公有水面埋め立て免許の取り消し
⑤08年12月

①埋め立て免許失効確認請求(併合審理)
②反対派の住民たち7人
③山口県
④福島第1原発事故以前に交付した埋め立て免許の失効と無効確認
⑤12年9月

①損害賠償請求
②反対派の住民たち45人
③山口県知事
④埋め立て免許延長の可否判断先送りで県が損害を被ったとして10万円の賠償 ⑤13年8月

①損害賠償請求
②中電
③祝島住民とカヤック隊員の計4人
④工事妨害で損害を被ったとして総額3900万円(提訴時は4800万円)の賠償
⑤09年12月

(2016年7月26日朝刊掲載)

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