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社説・コラム

『この人』 広島国税局長に就任した 鑓水洋さん

職員一丸で公正な執行

 「やるべきことは、適切かつ公正な税の執行(申告の調査や徴収)に尽きる」。6月、財務省主税局総務課長から広島国税局長に就き、役割を語る言葉はシンプルだ。20代に国税庁で勤務し「目標が明確だからこそチームワークが良く、勝手な個人プレーがない」と結束力を実感した。「伝統を引き継ぎ、全職員が優れた能力を発揮できるようにしたい」と語る。

 1987年、旧大蔵省入省。国際金融から中小金融まで携わり、主計、主税の両局でも働いた。内閣官房や熊本県への出向など幅広い経験を持つ。特に、バブル崩壊後、金融機関の破綻処理に公的資金を投入する道筋づくりに奔走した銀行局時代を「日本の経済がぶっつぶれかねない、先が見えない不安の中で仕事をして腹が据わった」と振り返る。

 当時の経験は、福島第1原発事故で生きた。主計局主計官として原子力損害賠償・廃炉等支援機構法制定に関わった。「東京電力だけで賠償責任は果たせない。経済産業省と膝詰めで、破綻処理の考え方を生かした」

 東京では神宮球場で大学野球を見るのが楽しみだった。「僕らの世代は大半が野球少年。一番の影響はオヤジかな」。父は山形南高で2度、夏の甲子園に出場。地元銀行に就職し、野球部の選手、監督を務めた。合併後のきらやか銀行(山形市)は今年の都市対抗野球大会に初出場した。「父はキャッチボールも手加減がなかった。星一徹みたいに鍛えられた」と笑う。

 山形県出身。好きな人物は、故ケネディ米大統領も尊敬したという江戸時代の米沢藩主、上杉鷹山。「殿様なのに自分を偉いと思わない。その『ポスト』はみんなが支えているという発想が素晴らしい」(山本洋子)

(2016年7月28日朝刊掲載)

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