×

ニュース

2知事 再稼働必要の認識 広島・島根 安全確保が前提

 国内の全ての原子力発電所が稼働を停止したことについて、島根県の溝口善兵衛知事と広島県の湯崎英彦知事は8日の記者会見で、いずれも経済への影響に懸念を示し、当面の電力確保に向けて原発の再稼働が必要、との考えをにじませた。前提として、政府に原発の安全性と信頼性を確保して国民の理解を得るよう求めた。(野崎建一郎、樋口浩二)

 中国電力島根原発(松江市鹿島町)を含めた全原発の稼働停止について溝口知事は「経済活動に影響を及ぼす」として、原発の停止が長引けば発電コストの上昇など経済面のデメリットが大きいと主張した。

 さらに「政府は(原発の)縮小方針を掲げているが、すぐにはできない」と語り、当面は原発再稼働が必要との見方を示した。個別の原発の名前は口にしなかった。

 湯崎知事も「日本全体でみると、電力不足が懸念される」と強調。原発ゼロで乗り切っていく選択肢については「そう簡単ではない」と繰り返した。

 再稼働の1番手と見込まれた関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)。政府は地元の理解を得られず、4月を目指した原子力規制庁の発足もめどがつけられない。

 湯崎知事は「安全を担保する組織が宙に浮いたまま。こんな状況は考えられない」と語気を強めた。溝口知事も規制庁の早期発足を求め、「原発を止めたらどういう影響が出るのか、選択肢を示して国民が議論することが重要」と訴えた。

 中国地方5県で、再稼働反対を明言する知事はいない。鳥取県の平井伸治知事が全原発が停止した5日、島根原発を念頭に「周辺地域の意見を踏まえるべきだ」と慎重な姿勢を示した。岡山県の石井正弘知事も「安全性の確保が大前提」との立場だ。

 中電の上関原発建設計画(上関町)を抱える山口県の二井関成知事は、再稼働の賛否について言及を避け「政府がもっと理解を得る努力を重ねてほしい」と訴えている。

広島県の同意加えず 島根・伊方の再稼働条件 湯崎知事

 広島県の湯崎英彦知事は8日の記者会見で、運転を止めている中国電力島根原発と四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の再稼働の条件に、広島県の同意を加えることに否定的な考えを示した。

 半径50キロ圏内に庄原市の一部が含まれる島根原発と、瀬戸内海を挟んで県境から約60キロ離れた伊方原発の再稼働をめぐっては、住民団体が「広島県の同意も条件に加えるべきだ」と求めている。これに対し湯崎知事は「距離を考えると広島県の同意を得る手続きを設けることは難しい」と強調した。

 「仮に広島県の同意が必要になれば県にも責任が生じる。原子力の専門家を集めて組織をつくるという話になるが、今はそういう状況にない」とも指摘。原発の安全対策は国が担保すべき問題だと繰り返した。

 大阪市の橋下徹市長が関西電力大飯原発の早期の再稼働に反対している点には「(大阪市は)原発からかなり離れている。原発がある地元自治体と意見が分かれた場合、非常に難しい問題になる」と懸念を示した。(村田拓也)

(2012年5月9日朝刊掲載)

年別アーカイブ